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2006年 07月 24日
サッカー:W杯2006振り返り企画#2:何故ブラジルはベスト8で敗退したのか?
「ブラジルは1000馬力のエンジンを持っていたのに、それがうまく動かなかった。」
-フランツ・ベッケンバウアー ドイツサッカー協会会長-



 今回予選からほぼ順当に勝ちあがってきた強国だが、ベスト8で優勝候補3カ国が一気に消える波乱があった。その中には、今回取り上げる南米の雄、アルゼンチンとブラジルも含まれている。ブラジルは、戦前から「カルテット・マジコ」が話題沸騰。またバルサのロナウヂーニョの活躍もあり、「今大会はロナウヂーニョの大会になる」と予想を立てる評論家も少なくなかった。
 アルゼンチンも、ベテランを軽視するペケルマンの召集振りに批判が高まったが、いざ大会が始まってみると、セルビア・モンテネグロに6-0で大勝する等、実績を作り否定派を黙らせ、大会中に一躍優勝候補の筆頭に躍り出た。
 この彼らがなぜベスト8と、早すぎる敗退を強いられることになったのか。
 今回は、セレソンに絞って、その理由をいくつかの側面から検証していきたい。

■ ブラジル敗退の理由
1.パレイラ監督の采配
2.エヂミウソンの怪我による離脱
◎八百屋のこれだけは言わせて!!…ロナウヂーニョのパフォーマンスが敗退の理由にはならない

1.パレイラ監督の采配
 今大会、リアリストで名を馳せるパレイラは、采配に大きな過ちを犯した。ベスト8フランス戦の、カルテット・マジコを崩した3センターハーフはその最たる例だが、それ以外にも複数の過ちを犯している。それを少し検証したい。

● RSBをカフーにこだわり続けたツケ
 ブラジルのアンタッチャッブルと言われた両サイドバック、カフーとロベルト・カルロス。この両者は明らかに衰えが顕著で、パフォーマンスも良くなく、後進を積極的に再拝すべきだった。
 特にRSBのカフーは、病み上がりと言うことで動きも鈍く、かつてのような90分を通しての、タッチラインのアップダウンする動きはなりを潜めた。グループリーグ第3戦の対日本戦では、カフーに変わりシシーニョが先発したが、どちらがインパクトを残せたかは、誰が見ても明らかだった。それを知っていながら目をつぶり続けたパレイラは、ベスト8でそのツケを一気に払わされることになる。

● ロナウドとアドリアーノ共存に無理あり
 今大会、どちらも絶不調のコンディションで臨んだこの二人。しかし大方の予想に反してロナウドは3ゴール、アドリアーノ1ゴールと、大会当初の出来を考えれば点を取ったと言えば取ったかも知れない。しかし、世間の期待は、02大会の「3R」の華々しさを更にしのぐサッカーでの、豪華陣営による得点の競演だっただろう。パレイラはメディアの質問に「なぜ、ブラジルは華麗なサッカーを宿命付けられているのか!?」と、憤慨していたが残念ながら全世界がセレソンに期待するサッカーとは、おおむるパレイラが嘆いている内容のサッカーだろう。
 さて、話は少し古い話題に遡るが、コンフェデ05大会。この大会でブラジルはアルゼンチンを下し優勝を手にしている。この時も、4-2-2-2のシステムをパレイラは披露しているがこの時の2トップは、アドリアーノとロビーニョの2トップだった。ロビーニョは、どちらかと言うと、運動量豊富に、パスを受けたりスペースを突いたりする、オフザボールの動きに優れた選手でもあり、ボールを持てばドリブルで局面を打開する能力も有している。ともすれば、相手DFはロビーニョに複数のマークをつける必要が出てくることになり、結果アドリアーノのマークがうすくなることがあった。ここでアドリアーノは活躍できたのだ。
 ところが今大会、ゴール前でガチガチに張るロナウドとアドリアーノは、敵に完全にマークされ、カカやロナウヂーニョはパスの出しどころに完全に窮した。カカやロナウヂーニョが輝きを放てなかったのは、詳しくは後述するが、彼らのコンディションが優れなかったからではなく、彼らがクラブチームとは全く異なる役回りに徹しなければならなかったということである。オフザボールの動きに乏しい、ロナウドとアドリアーノのコンビで、セレソンは全くと言っていいほどクリエイティブなサッカーが出来なかった。それでも、あれだけオーバーウエイトとメディアから酷評されたロナウドも一瞬のすきを逃さず3ゴールをあげたのは流石であったが、しかしそれが今大会の攻撃陣の限界だった。アドリアーノとロナウドの共存は終盤のパワープレーのときのみ。先発はロビーニョ+ロナウドかアドリアーノが、カルテットマジコを完全に活かすことの出来る布陣だったと、八百屋は思っている。

● ベスト8で用いた「3センターハーフ」起用の本質
 パレイラは、これまでメディアの質問に対し、W杯ではカルテット・マジコを必ず起用し続けると言明して来た。それに対し、八百屋は警鐘を鳴らしていたがその反面、彼がセレソンの活路は圧倒的な攻撃サッカーにある、と言うリアリズムから来る結論がカルテット・マジコであったのなら是非それを貫いて欲しかった。得てして、グループリーグ。マックと言っていいほど機能しなかったカルテット・マジコを使い続けて何とか形だけでも3連勝を手に入れて決勝ラウンドに進んだパレイラ率いるセレソン。ロビーニョやシシーニョ等、決勝トーナメントでのジョーカーをグループリーグで探し当てていたにもかかわらず、彼はそれらのカードを有効活用できずに、ベスト8で姿を消した。
 ベスト8のフランス戦。セレソン同様、グループリーグで酷評され続け、ベスト16で攻撃サッカーを見せつけ旋風を巻き起こしつつあったスペインを3-1の逆転で破ったフランスに恐れをなしたパレイラは、あっさりカルテット・マジコを放棄。3センターハーフの4-3-1-2(後日ビデオを見たら4-3-2-1に見えなくも無い)スイッチしたところで、セレソンの敗退は8割決まってしまった。
 特に1トップにロナウドをすえる暴挙に出て、攻撃の形は全く作れず。後半ロビーニョを入れてヨウや行くリズムをつかむも時既に遅し。攻撃サッカーは、結局結実することなくベスト8で消えていった。
 まず、ロナウドに1トップをやらせること自体、無理があった。ポストプレーに優れているわけでもなく、またオフザボールの動きに乏しい今のロナウド。彼が1トップをやって、機能するチームなど存在しない。ロナウヂーニョもますますボールの出しどころが無く混乱、敢え無くフランスの守備網に潰されていった。
 確かに3センターハーフは、南米予選でもしばしば見られた形で、守備重視のシステムの時には、これが用いられていた。しかし、パレイラはあまりに浅はかだった。フランスに守備的布陣で挑もうとしたこと自体が大きな間違いだったのだ。彼らも守備重視のシステム。同じ理論で組すれば間違いなく得意分野のフランスに軍配が上がる。セレソンは、どれだけカウンターの危険にさらされようと攻め続けるしか活路は見出せなかったはずだ。あの招集メンバーを見ても、守ろうと思えばもっと守れる選手を選ぶべきだ。リアリズムの裏打ちのカルテット・マジコかと思ったパレイラの采配は、実はメディアやブラジル国民のプレッシャーから逃げる為の苦肉の策でしかなかったことが、この試合で判明。信念を持たないパレイラは、ベスト8で敗れるべくして敗れたのだ。
 指揮官が最後まで自分の信念に自身が持てなかったカルテット・マジコ。もしパレイラが、腹をくくってカルテット・マジコを起用し続ければ、セレソンはもっと違った結果になっていたか知れない。


「何故、ブラジルだけが魅力的なサッカーをしなければならないのだ?記録には魅力的かどうかは残らない。トロフィーを勝ち取ったチームだけが記録に残るのだ」
-カルロス・アルベルト・パレイラ ブラジル代表監督(先日監督を辞任)-


2.エヂミウソンの怪我による離脱
 パレイラにとっては、一番痛かったのでは、ロナウドやアドリアーノのコンディション不良や、采配の方法ではなく、このエヂミウソンの離脱だったかもしれない。

● Wボランチのファーストチョイスは、エメルソンとエヂミウソンだった!?
 実は、パレイラはWボランチは、エメルソンとエヂミウソンで行くつもりだったのではないか。八百屋は今でもそう信じて疑わない。
 バルサで大きな成長を遂げたエヂミウソンは、センターバックもボランチも出来るマルチロール性を持っている。多くの専門誌が、ゼ・ロベルトをボランチのファーストチョイスだと取り上げていたが、ボランチが本職でなくしかも守備能力は凡庸の域でしかないゼ・ロベルトにパレイラが満足していたはずが無い。その理由は、W杯94アメリカ大会。このワールドスタンダードともなったWボランチシステムの基礎を作り上げたパレイラが掲げるWボランチは、マウロ・シウバやドゥンガのような、守備力の高く、ショートパスの制度がきわめて高い、フィルター+繋ぎの役割を求めているはず。しばしドリブルで攻め上がり、守備をお留守にするゼ・ロベルトは、攻撃的タレントが揃わない南米予選ではチョイスできるメンバーでも、攻撃陣がずらり揃う本大会では、遅くスーパーサブの扱いでしか考えていなかったはずだ。
 実際、W杯前のキャンプで、エヂミウソンはパレイラにつきっきりで指導を受けていたと言うエピソードがある。彼のボランチ+CBが出来るマルチロール性を十二分に活かした、3バックとWボランチの戦況においての併用を、彼に説いていたはずだ。つまりは、両サイドバックが攻めあがった場合、最終ラインは、2枚のCB+エヂミウソンの3バック+エメルソンの1ボランチでしっかり守り、4バックが戻ってきているときは、4バック+Wボランチでしっかり守る、カルテット・マジコを100%攻撃に充てる為の、守備網の構築ヲパレイラはやっていたはずだ。
 そして、その動きを実践で確認し、体で覚えてもらう為、怪我していたエヂミウソンを無理やりテストマッチで起用してしまい、怪我か更に悪化。エヂミウソンはW杯を断念せざるを得ず、無念の会見でも人目をはばからず涙していた。彼の涙は、パレイラの期待に応える事が出来なくなった無念の涙だったのではないか…八百屋は今でもそう思っている。

● ゼ・ロベルトが攻守のバランスを壊す
 ゼ・ロベルトは、今大会、不調のセレソンの中で気を吐いていた、と評する専門家は少なくない。ヤフーのベストイレブンと言う企画があっていたので何気に眺めていたら、ゼ・ロベルトをベストイレブンに押す方は少なくなかった。
 しかし、八百屋に言わせれば、ゼ・ロベルトはロベルト・カルロスやロナウヂーニョの特徴をかき消した張本人であり、守備のバランスをも崩したマイナス要素の多いプレーヤーだったと評価する。
 まず、ゼ・ロベルトは、繰り返すようだがボランチが本職ではない。主戦場は左サイドハーフ。代表にはいつもロベルト・カルロスの存在があり、いつも日の目を浴びることが少ないセレソンの苦労人だった。
 しかし、ボランチのポジションを与えられると、不思議とフィットしたように見えた。サイドハーフで鳴らした攻め上がりと、もともと運動量が豊富だったこともあって、ピッチの随所に顔を出したゼ・ロベルトは以降、ボランチのポジションで起用されることが多くなる。しかし、これは、3センターハーフと言う、3ボランチにも似たシステムで初めて可能な動きで、セレソンのWボランチにおいては、1も2にも守備専従がその役目であるはずだった。
 ところが、攻めあがりこそ我が心情のゼ・ロベルトは暫し守備をエメルソンに押し付けて攻め上がる時間帯が多かった。また、エメルソンも今大会コンディション不良だった為、守備の負担はことのほか大きく、何度無くセレソンの守備は緊急事態に陥った。
 また、左ボランチを勤めていた、ゼ・ロベルトはロナウヂーニョやロベルト・カルロスとの連携が重要な役割だった。しかし、ゼ・ロベルトはロベ・カルの攻め上がりを悉く無視し、パスを出さないばかりか、自分が攻めあがることでロベ・カルを自身の守備へと追いやってしまったのだ。この、ロベ・カルのパスを出さないプレースタイルは後に、ロベ・カルに左サイドのレギュラーを奪われ続けていた鬱憤を晴らした、と言う報道が出てしまうほど徹底して存在を無視。これにはロベ・カルも怒り心頭。公式の場でのコメントは無かったが、非公式ではとても言えない様な辛らつな批判があったと伝え聞く。
 そして、ロベ・カルの効果的な攻め上がりがゼ・ロベルトによって封じられて一番困ったのはロナウヂーニョだった。
 今大会、FWのオフザボールの動きが乏しかったのは前述したが、パスの出しどころに窮していたロナウヂーニョに、その活路を与えてくれる役割をロベルト・カルロスは持っていた。しかし、攻め上がりを自粛せざるを得なくなったため、ロナウヂーニョが期待していたロベ・カルの攻め上がりは無く、ロベ・カルが攻めあがっていても、その時のボール保持者はゼ・ロベルト、何ともバツの悪い状況が今大会随所に見られた。
 彼がセレソンでない代表チームであれば、許されるプレースタイルだったかもしれないが、ここはセレソン。彼のプレースタイルはセレソンに悪影響を与えたことは間違いない。八百屋は彼の2得点よりも、ロベルト・カルロスやロナウヂーニョの魅力を半減させた彼のスタンドプレーを批判したい気持ちの方が強い。


◎八百屋のこれだけは言わせて!!…ロナウヂーニョのパフォーマンスが敗退の理由にはならない
 今大会、多くのメディアがロナウヂーニョのパフォーマンスが、セレソンのベスト8敗退の理由として挙げていた。一部では、期待はずれだったワールドクラスのプレイヤーの中に、ロナウヂーニョに1票を投じたジャーナリストは、結構多いかもしれない。
 しかし、ここまで読んでいただけた方は、何を言おうとしているかもうお気づきだと思うが、ロナウヂーニョのパフォーマンスが、セレソンのベスト8での敗退には何ら関係ないし、ロナウヂーニョのコンディションが不調だった言うわけでも決して無い。何が言いたいかとすれば、ロナウヂーニョのバルサでの役割とセレソンでの役割はあまりにも違いすぎたと言うことだ。
 バルサでは、センターバックの2人を除く全選手が、オフザボールの動きに優れている。FWでは、エトー、ジュリ、メッシー、ラーション、MFでは、デコ、シャビ、イニエスタ、ファン・ボンメル、SBでは、ジオ、フレッヂ…みんなオフザボールの動きに優れている。
 彼らが流動的に動くことで、相手DFがマークに苦しみ、ロナウヂーニョに張り付くマークが少なくなると彼自身が突破を試みる…バルサでは実に役割分担が明確で、且つ攻撃のスタイルやシステムが全員に浸透しており、ロナウヂーニョも彼の手段を十二分に発揮できるベースが整っていた。
 ところが、セレソンではどうか。彼はあくまで左のOMFの1員でしかない。つまり、攻撃の組み立てが主であって、自分が生きるようなプレースタイルを求められているわけではない。どらかと言えば、パサーとしての役割が求められている。
 しかし、パサーと言えど、パスの受け手が動かないFWだと、困惑してしまうのは当たり前だ。ここには、エトーもメッシーもジュリもラーションもいない。いるのはペナルティーエリアに張り付く、ロナウドとアドリアーノだけ。唯一の望みのロベルト・カルロスも守備に追われ、効果的な攻め上がりが望めなかった今大会、ロナウヂーニョの活躍を望むほうが無理だった。
 ロナウヂーニョは確かに凄い選手であることは間違いない。しかし、彼が100%のパフォーマンスを発揮できるのも、戦術をよく理解しているバルサの面々がいるからであって、ロナウヂーニヨがどこのクラブに行ってもあのような活躍ができるかと言えばそうともいえないと思うし、今回のセレソンがはからずしもそれを証明してくれたと思う。
 ロナウヂーニョは偉大な選手だが、絶対ではない。残念ながらマラドーナのように1人で全ての戦況を変えてしまうような力はまだ彼には宿っていない。それを勘違いしたメディアが彼を酷評していたがそれは大きな間違いだ。
 ブラジルに帰国後、彼は国民に謝ったという。責任感の強いロナウヂーニョらしいエピソードだがそれは違う。サッカーは11人でするもの。セレソンと言えどその事実に変わりは無い。
 その事を分かっていながら効果的に策が打て無かったパレイラが、ベスト8で消えてしまったのは、ある意味必然だったのかもしれないと、妙に納得してしまった八百屋だった。

# by R-130 | 2006-07-24 17:08 | ∟FIFA Worldcup 2006
2006年 07月 23日
サッカー:W杯2006振り返り企画#1:アジア代表に足りなかったもの
(あらかじめお断り:今回のオーストラリア代表はAFCに加入していますが、便宜上アジア代表からは外させていただきますことをご了承下さい)

「今回ジーコはどんなサッカーをしたかったんだ?」

-クロアチア戦終了後、あるドイツ人プレスが、日本人プレスに問いかけた言葉-


【アジア勢惨敗と縮まるアジア枠】
 今大会のアジア代表枠は4.5。0.5枠はアジア予選の5位チームと、北中米カリブ海4位のチームとのプレーオフで、実際はバーレーンとトリニダードトバゴがhomeアンドawayで戦い、トリ・トバが逆転でW杯初出場を決めた経緯がある。
 今大会のアジア代表は、日本・韓国・イラン・サウジアラビアと極めて順当な4カ国となった。前回の日韓共催に出場した中国は、5位にも滑れず予選敗退。中国としてはまだまだアジアでも中位のレベルでしか無い現実をまざまざと見せ付けられた結果となった。
 しかし今回のアジア勢は結果を見ても「惨敗」と言う言葉しか出てこないほど、ぐうの音も出ない結果に終わった。
 韓国を除く3カ国は、2敗1分で勝ち点1。勝利ゼロで総得点2と言う寂しさ。サウジアラビアと日本は7失点も喫している。
 善戦した韓国も1勝1敗1分で勝ち点4。得点は3失点は4に終わっている。
 一番サッカーの内容も充実していた韓国ですら勝ち点で4で決勝トーナメント行きを逃したのである。他の3国に関しては「何をかいわんや」である。
 アジアでは韓国だけが世界への可能性を感じさせるサッカーを展開していた。準優勝国のフランスの失点3のうちの1点は韓国が奪ったものである。そのフランスと引き分けた韓国もグループリーグで敗退するのだから、世界の壁は相当厚いといわざるを得ない。日韓共催のホスト国がベスト16にコマを進めたのは、残念ながら地元の利を活かせたから、とか、フロックだと言われても言い返せない現実が待っていた。
 このアジア勢の惨敗で、おそらくアジア勢の出場枠は「4」に縮まる可能性が極めて高い。1部では、オーストラリアのAFC加入で4.5~5枠を確保できるのでは…という甘い憶測も流れているが、日韓共催時に3位に駆け上がったトルコや、ユーロ04の勝者ギリシャがW杯の舞台に出てこれない欧州の事情を鑑みれば
そちらに枠を振る方がはるかに高レベルなゲームを期待できると言う結論になってしまっても、仕方の無い状況。AFCは本気でレベルの底上げを考える必要があるだろう。


【日本を除く3カ国に足りなかったもの】
○ 韓国 … 取れるところで点数を取るしたたかさと層の厚さ
 アジア勢で善戦した韓国の欠点を指摘するのはいささか気がひけるが、それでも何が足りなかったかといえば1戦目のトーゴ戦。イエローで10人になったトーゴにあと1~2点取るようなしたたかさが無かったのが苦戦した最大の理由だった。2戦を終わった段階で勝ち点4ながら2位の韓国が、実は勝ちあがりの条件が一番厳しかったのは、全ては初戦で得点を稼げなかった「得失点差」にある。このため、韓国は最終戦のスイス戦に攻撃的に望まざるを得ず、結果的にスイスに足を払われた格好となり敗退した。
 また、02大会から主力がそれほど変わっておらず、またレギュラーと控えの差が大きかったのも敗退した理由に上げられる。サッカーは11人でプレーするゲーム。パク・チソンがいるだけでは勝てないのである。アドフォカート監督が、長期アウェー戦の日程を組み、勝負の為の精神力や現状の問題点を徹底的に洗い出したことで、最後の1年で戦力が飛躍的に向上したが、層を厚くするには至らなかった。
 しかし、体力はアジア4カ国の中で間違いなく1番あったし、90分を通じてよく動けていた。世代交代を間違いなく押し進めれば、韓国は今後も期待が持てるだろう。

△ イラン … 体力とバランス。そして政治力というプレッシャーに打ち勝つ「マンパワー」。
 イラン代表は、こと攻撃力には大きな可能性を見せ付けた。それもそのはず。ブンデスリーガに所属する攻撃的なタレント4名、カリミ・ハシェミアン・マハダビキア・ザンディを擁しているだけ有り、攻撃に関しては緒戦であのメキシコを圧倒していた時間帯があった。また、若手も順調に伸びておりベテランと若手のバランスの取れた好チームになっていたのも見逃せない事実だ。
 しかし、メキシコ戦・アンゴラ戦ともに後半はスタミナ切れに伴う失速。これはアジア予選から見せていた体力的なウィークポイントを修正していなかったツケが回ってきた格好となった。
 また、ブンデスリーガ4人衆+ダエイという攻撃的タレントを全員同時にピッチに立たせてしまうとやはり守備力の不安は隠し切れず、緒戦のメキシコに後半立て続けに2失点したのも、スタミナ切れと守備の不安を突かれた結果であった。
 それに、アンタッチャブル的存在のダエイの処遇。これもイランに暗い影を落とした。
 どのナショナルチームにも、アンタッチャブル的な存在の選手の采配に四苦八苦する監督が多いが、ダエイの扱いにイヴァンコビッチ監督も苦労した事だろう。戦力的には外して当然の能力だったが、彼のこれまでの実績やイランの世論がそれを許さなかった。結局所詮、ダエイはほとんど何もしない「お荷物」のままピッチに棒立ち。ダエイが他の選手に代わっていれば、前半イランはリードで折り返せていたかもしれない。
 ダエイはおそらく今大会で代表を引退すると思われるが、やはりこのようなベテランを状況に応じては、切り捨てる決断力も監督の能力には必要な部分だと思われる。

× サウジアラビア … 監督だけではどうにも出来ない「宗教上の戒律」の壁
 サウジアラビアは、トヨタカップにアジア代表として出場した"アル・イテハド"を擁する国である。アジアレベルとして、サウジアラビアは依然高いレベルにあるのは間違いない。しかし、この国が世界レベルに出るとどうにもピリッとしない。前回の02大会では、緒戦のドイツに6失点を喫し大敗。アジアの恥とまで言われるほど、サウジアラビアのパフォーマンスはお粗末だった。
 彼らのサッカーは、堅守+カウンターである。身体能力の高さを活かした、フィジカルの強さと俊足を武器にしたサッカーは、アジアレベルでは強力な武器になりうる。他の強国はまずこのフィジカル部分で大きく劣っており、これがサウジアラビアがアジアではまだそこそこの強さを示せている最大の理由だろう。
 しかし、この堅守+カウンターには、絶大な決定力を持つFWを擁さないと、戦術としては成り立たない。ウクライナのシェフチェンコのような特筆すべきFWがいなければ、世界レベルでは通用しないのだ。
 残念ながら、サウジアラビアにはこのようなFWがいなかった。グループリーグ最終節、スペイン戦。スペインがわざと引いて守るというシチュエーションの中、サウジアラビアはスペインに怒涛のシュートを浴びせるも1本も決まることはなかった。拙攻、と言えばそれまでだが、やはり決定力のなさが響いた試合だった。
 しかし、彼らが選手の底上げを図るのに「大きな壁」が存在する。それは、宗教上の戒律から他国でのプレーができないのである。これは、それまでアジア最強と言われていたサウジが、それほど目立たなくなった最大の理由だ。他のライバル国は軒並み欧州に選手を送り込んでおり、世界レベルを経験している選手が増えてきた。その中で、彼らは同国内でサッカーを磨かなければならない。これは、非常に大きなハンデになる。
 残念な話だが、サウジが今後も大きく伸びる可能性は少ないだろう。もっとも、ずば抜けたタレントが数名同時にピッチに現れれば話は別だが、現状の制度ではズバ抜けた才能も、群集に埋もれたままになる可能性も高い。つくづくもったいない国である。


「日本の選手には、すべてを任せるにはまだ未熟すぎる」
-フィリップ・トルシエ 元日本代表監督-



【日本に足りなかったもの】
 今更、日本代表やジーコを批判しても仕方がないし、過去に沢山してきたので今回は箇条書きにまとめるにとどめて、その次の項目の"時代の日本代表に期待するもの"に行を裂きたい。

・90分間動ける体力
・主力組にも、ポジションを失うかもしれないと言う危機感と競争心
・監督・選手の信頼感(選手同士も含む)
・ソリッドな戦術とフレキシブルな采配

今大会の日本代表の凋落の理由は、監督8:選手2だと八百屋は見ている。殆どは監督に起因するものが多くもうここでああだこうだ言い始めると、長くなるので割愛したい。一つのエピソードとして、最終戦を前に日本代表が練習していたシュート練習のエピソードと、シュート練習の意味について記して、この項を了としたい。

最終節ブラジル戦を前に、ジーコは選手にシュート練習を課した。それは風のうわさでは500本シュートだったと言われている。
その選手のシュート練習に約2000人の日本サポが見つめていたそうだ。
しかし、シュート練習が始まっても一向にゴールにシュートが入らない。
これに、日本サポがざわつき始め、最後には「きっちり決めろ!!」と、ブーイングを飛ばし始めた。
これに対し、小笠原は
「シュート練習なんだからコースを突いたシュートを打つ。この場で入る入らないは問題じゃないんだ」
と、はき捨てるように言ったというエピソードがある。

このエピソードを聞いて皆さんはどう思っただろうか?
シュート練習と言うあくまで「練習」にブーイングを浴びせるサポが悪いのか。
それとも、小笠原の言い分が引っかかるのか。
あえて、八百屋はここでは言及しないが一ついえるのは、この状況で日本がブラジルに勝つ可能性は万に一もなかったと言うことだろう。
そして、選手にジーコは多くのシュート練習を課したようだが、それは実を結ぶことなく、ドイツ大会を終えたと言う事実だけが残ったのも何とも皮肉なことである。


「ジェフ千葉をすばらしい指導力で上位に導いたオシム監督こそ、次期日本代表監督にふさわしいと言う結論に至った」
-川渕三郎 JFA会長-



【次期日本代表に望むもの】
 日本の次期代表監督は、イヴァイツァ・オシムに決まった。いわずと知れた、ジェフ・千葉の監督がそのままクラブチームを捨てて代表監督に就任した格好だ。
 まず、日本代表に期待する前に一つ言わせていただきたい。
 ジーコに全権を委任した川渕は、今大会の結果を厳然と受け止めて辞任すべきである。それを、わざとフライングしたような言い方で、自身の引責問題をはぐらかすような手腕を用いたことは、卑劣極まりないし、何より日本代表のことを親身に考えているとはいいがたい。彼のような、代表を「食い物」にしか考えていない人物は今すぐ要職から身を引くべきだ。
 八百屋は、某国営放送の教育テレビで、珍しくサッカーを取り上げていた川渕が出演していた番組を2夜連続で見させていただいた。彼が、日本のサッカーに多大な貢献をしたのはよく理解した。それでも、ここ10年の彼の行動や発言は許されない内容を多く含んでおり、これが民間企業なら、引責辞任が当たり前である。
 このような人間が要職にいる限り、日本のサッカー界が健全に発達するとは考えられないことを、まず主張して本題に入らせて頂きたい。
  
 オシム監督の就任に、国内は極めて「歓迎的」な論調だが、彼の実績が1990年にユーゴスラビア代表を率いたい外、これと言った実績が無いに等しいことを考えると、実績ベースは「ジーコより少しマシ」と考えておいたほうがよい。
 また、走って走って考えるサッカーは、Jリーグのようなディフェンスのぬるいリーグでは通用しても、激しいプレスとハードなマンマークが幅を利かせた今大会のような世界レベルのサッカーでは、これまたまったく通用しないだろうと言うことも警鐘しておきたい。
 八百屋的には、オシムが適任だとは思っていない。
 しかし、ジーコよりははるかにマシだろう。
 勝利へのメンタリティーや、フィジカルトレーニングを軽視しない(ジーコはフィジカルトレーニングを軽視しすぎたため、走れない集団をも作り上げてしまった)オシム理論は、これまでぬるま湯の環境の日本代表に大きな変化をもたらすことは待つがいない。しかし、意識改革ができてもサッカーそのものへの影響力は極めて疑問だ。それはジェフ千葉を見ても解るが、彼がどのような戦術を軸としたサッカーを展開しようとしていたのかは不明だ。それが、ジェフの戦績が一定しない最大の理由である。
 とにかくどのようなサッカーを標榜するのか。オシムにはまず、その仕事をやってもらいたい。
 また、気になる世代交代についても
「井戸には、まだ汲む事の出来る水があるのに、新しい水が必要なのだろうか?」
と言う彼なりの比喩を用いた表現で、急速な世代交代を否定する発言を行っている。世代交代は、今日本代表に最も必要とされているテーマで、これから4年後を見据えたメンバーの召集と言うのを真剣に考えていかないと、4年後は更に惨敗する可能性もある。今までの彼らには「経験」と言う上積みがあったのにも関わらずこの成績だった。今の世代より下の世代は国際経験にも乏しい。よくよく考えた、明確なビジョンをもった代表案を持たないと、気がつけばジーコの2の舞にならないともいえないので、よくよく考えていただきたい。


【Jリーグに望むもの】
 この項の最後に、Jリーグに望むことを提言して、了とさせていただきたい。
 あまりJリーグを熱心に見ていない八百屋がこんなことを言うのはおこがましいのを覚悟で言わせていただければ、

・当たりの強いDFの奨励
・国産FWの早期育成

を挙げたい。
この二つは、実は密接に関わった問題である。
現状、Jリーグのトップ10スコアラーの内、8名が外国人で占められている。日本人は、我那覇(川崎)と佐藤(広島)の2名のみ。非常にお寒い状況だ。クラブチームとしては、運営上、得点愿を外国人に求めることは、現状の仕組み上もっともなことでありそれを否定するのはお門違いであることは承知である。
しかし、外国人が項も幅を利かせてしまう最大の理由は「日本のDFのゆるさ」だと思う。
当たりが弱い、マークもゆるい、そして何より今まで審判が神経質に笛を吹きすぎたおかげで、DFも飛び込みづらくなっている。日本のDFが大成しないのは、Jリーグの忌まわしき悪習があるからである。これを即座に見抜いた前々日本代表監督のトルシエが、フラット3と言う組織的守備にこだわったのも、1対1では欧州・南米の強国FWとは万に一も渡り合えないことを周知していたからだ。
 しかし、今大会の傾向は、カンナバーロやギャラスが見せた、激しいディフェンスであり(と、言っても悪質に削ったりするものではない)日本もこれに背を向けてばかりはいられないような気がしている。
 まずは、DFが激しく行くこと。くどいようだが削るというわけではない。クリーンに激しく。矛盾しているかもしれないが、プレミアリーグなんかは結構クリーンに激しいディフェンスが多いと思う。参考にしてもいいのかもしれない。そして、審判の質も同様。今年はW杯に標準を絞り、審判の反則の基準がシーズン前に大きく見直され、前のようにプレーが流れない悪しき風習は少しなりを潜めた感がある。それでももっと流していいプレーもあると思う。審判にも同様に向上していただきたい。
 そして、FWの人材育成。これが急務だろう。営利目的のクラブチームにとって、日本代表のFW育成など関係ない話であることは重々承知だが、それでもやはり日本人のFW選手に出場機会を与えないと、育つものも育たないのは、火を見るより明らかだ。とにかく若いプレイヤーは積極的に登用してプレーさせてもらいたい。こればかりは、どうにかなる問題ではないかもしれないが、そろそろ外国人国籍の選手を帰化させる流れは断ち切っていただき、日本の中でも良い選手を発掘する体制をとっていただきたい。
 得点力不足解消のための決定力のあるFWの育成。これは常に日本代表に付きまとってきた最大の課題である。
 この画題が解消できれば、世界水準に大きく近づけるのではないかと、八百屋は睨んでいる。

# by R-130 | 2006-07-23 17:13 | ∟FIFA Worldcup 2006
2006年 07月 21日
サッカー:ジダン問題の処分下る、形式上は喧嘩両成敗だが…
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■ 「最優秀」はく奪なしを歓迎=対ジダン、「象徴的処分」-仏メディア … 時事通信

■ マルディーニらが批判 マテラッツィも処分で … 共同通信

■ ジダンに処分!罰金71万円+社会奉仕3日 … 日刊スポーツ

■ <イタリア>FIFAのマテラッツィ処分に反発「不公平だ」 … 毎日新聞 


 FIFA Worldcup2006 Germany 決勝。
 あのジダンの衝撃の頭突き事件から10日余の時間を経て、ついに処分が決定した。

● ジヌディーヌ・ジダン:
約70万円の罰金と、3試合の出場停止
(ジダンは引退を表明しているので、3日間の社会奉仕になる模様)


● マルコ・マテラッツィ:
約47万円の罰金と、2試合の出場停止



 懸念されていたMVPの剥奪については無かったが、とりあえず上記のような処分が下された。
 どのような事情であれ、暴力と言う報復行為は許されないことだと思う。人種差別発言があった無かったも、今回の処分の論点になっていたが、今回は「無かった」と言う結論が出た。語弊があるのを覚悟で短くまとめれば、マテラッツィの家族に対する執拗な侮辱に、ジダンが切れて頭突きをしてしまった、と言うことになる。

 しかし、今回の案件の画期的も懐疑的も言える処分は、マテラッツィにもお咎めがあったこと。喧嘩両成敗といえば聞こえはいいが、果たしてこの処分は今後の同様のケースにどのような影響を与えるのであろうか。

 サッカーにおいて、相手を挑発するシーンと言うのは結構ざらに見受けられる。「挑発もサッカーのうち」と言い切る方もいらっしゃるほど、挑発はキレキレの相手のプレーに歯止めをかける重要な手段とも言えなくも無い。
 要は、挑発に乗る相手が悪いわけで、それに乗ってしまったジダンは止む無し、と言ったところだろうか。
 しかし、事はW杯の決勝、雌雄を決する重要な場面で起きた事件。しかも、世界的にも有名な、ジダンが引退する試合に起きた事件と言うことで、騒ぎはことのほか大きくなった。各国のメディアが、ジダンの頭突きのリプレイを何度も流し、マテラッツィのジダンにかけた言葉が、推論として大きく取り上げられ、至る所で大きな論争を呼んだ。

 しかし、次の点を考えてもらいたい。
 例えば、今後、小国同士のW杯予選などで同様の問題が起きた場合、同様の処分が「両者」に下るのだろうか?
 特に、きっかけを作った者、今回で言えばマテラッツィがそれにあたる、も出場停止などの処分が下るのだろうか?
 この判断は極めて難しいと言わざるを得ない。
 今回は、非常に注目度の高い試合で、しかもカメラも幾方向からのアングルもあり、逃げるに逃げられない問題に発展し、マテラッツィも自供に踏み切ったと思われる(一説では、自分のオフシーズンのバカンスに早く入りたいため、長引かせないためにそれなりの供述をしたと言う憶測もある)。しかし小国の予選などは、映像などの物的証拠にも乏しく、当事者の自供次第では処分も難しくなるかもしれない。

 人種差別発言は確かにあってはならない案件だと思う。これはこれで重要な問題だと思う。
 しかし、誰かが挑発し、その挑発に乗った人間が暴力に訴えた場合、両者が処分されるとなると、今後はこのように当事者同士がFIFAから事情徴収を受け、両者に出場停止処分が下るケースが増えるのだろうか?

 今回の処分は、今後の同様の案件に非常に大きな影響を与えるだろう。
 もし、同様の騒ぎが起きた場合、FIFAがどのような判断を下し、どのような処分が下されるのか、興味深く見守りたい。

 ただ、最後に八百屋の個人的見解として、
 挑発してもいいとは言わないが、今回の裁定はややジダンを擁護しようとした向きがあるような気がしてならないし、イタリア側が憤慨するのも無理は無いかなぁ、と思うことを付け加えさせていただきたい。

 

# by R-130 | 2006-07-21 21:48 | ∟FIFA Worldcup 2006