2007年 06月 26日 ( 1 )

2007年 06月 26日
News:ミートホープの食肉偽装事件について思う事
 以前のエントリーでも挙げたが、更に事件の全容が明るみに出て、あの社長の発言を受けて、更に思う事を追記したいと思う。


 まず、従業員100名が全員解雇、会社が休業状態になったこと。
 何がともあれ、従業員も犠牲者であると言うこと。
 別に擁護するわけではないが、あのような規模の小さい会社だと、上司の命令に逆らうことは非常に難しいと思われる。恐らく工場で働く全員が認識していたはずだ。自分たちが、やってはならない領域に手を染めていると言う事実を…
 確かに、わかっててやると言うことは罪であるし、勇気を持って、不正をしてはいけない、と真っ向から言い切ることも大切である。しかし、雇われている身としては、そして、この御時世、職にほいほい就ける様な好況でもないとなれば…言われたことに従わざるを得なかった背景は見過ごせないと思う。本当に社長に、従業員を助けようと言う気持ちがあるのなら、不正に手を染めるのではなく、別の方法を考えていただきたい。それがこの世の中、無いから意思の弱い者ほど不正に手を染めるのだろうが…しかし不正に手を染めてもやがては更に自分の首を絞めるだけであるということを理解してもらいたい。


 この件で別の問題も浮上。
 ミートホープの元社員の農政事務所への内部告発が、放置されていたと言う事実が発覚した。
 基本的に、事業所を国と自治体のどちらが管轄するかについて、事業所が1つの都道府県内にあれば自治体が、複数にまたがっていれば国が指導するのが慣例である。
 今回は前者であり、北海道の農政事務局が指導する立場にあるはずなのだが、これが国とお見合い状態になってしまい、放置されていたと言うのだ。
 なんとも情けないお役所の事情。折角有益な情報が届けられても、放置されりゃただの情報以下である。今更ながらに放置されている情報が無いか、躍起になって探しているようだがそれって違うよね。社会保険庁の件もあるし、もう日本のお役所が見直されることって永遠に無いだろうね。


 また、ミートホープの偽装は長年にそして多岐にわたっているようだ。
 自分で把握しているだけでも、

・ミンチにパンを混ぜる
・赤みがしっかりさすように血を混ぜる
・重さを増すために水もさす
・中国の鳥インフル報道時に、中国のかも肉を混ぜる
・他メーカーからのクレーム品は保険金で処理して、商品は回収して別ルートで平気で売りさばく
・加ト吉から賞味期限切れのコロッケを引き取り、リパックして賞味期限を付け直して販売する(この件に絡んでいた加ト吉の社員は解雇)
・牛ミンチだけでなく、他の食肉も偽装

 と、もうやれることは何でも手をつけている状態。
 これだけやればさぞかし儲けているのだろう、と思いきや、前年はなんと赤字に転落している。
 同族経営による役員報酬が法外過ぎるなど、色々な指摘はあるがこれだけやっても赤字、と言うことは、それだけこの業界が厳しい状況にある、と言う事実は推して知ることが出来るということだろうか。



 そして物議を醸しているのが社長の開き直りとも取れる弁明。
1.「利益を下げるためにはコストを下げるしかない。」
2.「小売業界が、冷凍食品を半額で売るのはおかしい。適正な価格で売るべきだ。」
3.「偽装は業界の慣行ともいえる。」
 これから捜査のメスが入ると言うのに、茶色のネルシャツと言う信じられない格好で報道陣の前で饒舌に語る姿がどこのデレビでも流されていた。 
 
 まず3について。
 残念ながら雪印の偽装事件以降も、食品業界で様々な偽装事件が続けられてきている歴史がある。やはり残念ながらこの事件も氷山の一角でしかないといえるだろう。後述するが、厳しい原価競争が続く中、原料費は上昇傾向にある。そんな中でもメーカーや小売への納入価格は下げろ、と言うプレッシャーが重くのしかかってくる。
 そう言う状況下で、所謂加工屋や原料メーカーがどれだけ正直な商売をしているのか…自分はこの業界の現状をある程度知っているだけに、正直全部が全うである、と言い切なる自信が無い。それ程業界的に逼迫しているものがある。

 次に2について。
 言っていることは暴論ではあるが、反故には出来ない内容もある。
 まず、責任の一端を消費者に擦り付けるのはお門違いであることを前提の上、言わせてもらいたい。
 昨今のオーバーストア状態が招いている、必要以上の価格競争は、メーカーや問屋を窮地に追い込ませている。
 我々小売業界は、安売りしながらも利益を得るために、時にメーカーや卸業者にとんでもない要求をすることがある。現状は公取の目が厳しくなり、メーカー等に圧力をかけることなど出来なくなったが10年-20年前は平気でやくざまがいの商談がとりおこなわれてきた。そして昨今の日本の小売業界の再編で、大口の小売業に何とか取引を得るため、少々無理な言い事も、飲むようなメーカーが増えてきている。
 そうすると、次のような図式が出来上がる。

○ 小売業(スーパー)が安売りしても利益を出すため、卸・メーカーに原価を引き下げるように要求する

     ↓↓↓↓↓

○ 卸・メーカーも安く納入しても利益を出すようにするため、原料屋や加工やに納入価格を引き下げるように要求する

     ↓↓↓↓↓

○ 原料屋(この場合だとミートホープ)や加工屋は、自らの原料調達に営業努力をしなければならないがそれにも限界がある、従業員もいるから会社も存続させなければならない、しかし原料の価格は決まっている…


 この図式で行くと、現状の安売り大合戦のしわ寄せは、全てミートホープのような会社に回ってくることになる。彼らとて、取引がないと商売が無いわけで…と言ってミートホープを擁護するつもりは無いが、このような実態があることをこのブログを読んでもらっている皆さんには知ってもらいたくてちょっと書いている。

 
 八百屋が本職の野菜も似たような状況だ。
 過酷な価格競争の末、市場でも適正価格が保てない状態が続いている。
 ここ10年で野菜の平均価格は大幅に下落したと、八百屋個人は思っている。現に農業従事者が減っているのに、である。
 それは、技術の向上とかそういった、プラスの要因では全く無い。
 相場が仮に上げても、価格が上昇すると消費者が一気に野菜離れするため、価格が維持できないのである。
 昔のように、野菜は絶対に食べるもの、では無くなりつつある。それは日本の食習慣や、生活習慣病の人口の急増からも窺い知ることが出来る。もはや野菜は、食卓に欠かせないものではなくなりつつあるのではないかとさえ思い始めている。

 このように野菜の価格が維持できない現状で、更に農家の方の収入は激減。市場で話を聞いていたら「箱代すら出ない、袋代すら出ない」と嘆く農家の方もいらっしゃる。それ程、現状の国内農業は貧窮している(全ての品目がそうである、と言うつもりはないが)。


 我々小売業界の店舗乱立による過剰な価格競争はこのようなひずみを生んでいる。


 だから個人的には消費者が悪いと言うより、我々小売業界が悪いと思っている。
 自分たちの利を追求するあまり、必要以上の安売りを差し込む。他店も負けじと追随する。更に安売りを差し込む…この悪循環にはまり、消費者もその安い価格が当たり前になる。
 "冷凍食品は半額にならないと買わない消費者が悪い"、とミートホープの社長が言った背景はこれだと思う。暴論ではあるが、現状の業界を表している言葉ではある。

 自由主義経済の原点ともいえる競争原理が、今我々の食生活の原点を支えている、農業を営む人や、原材料を作る人たちを直撃している。
 もともと戦後の政府の保護政策の上に成り立っていたため、このような競争原理に非常に弱いのは昔から常々指摘されていたことであるが、このままでは日本の食料自給率はますます下がり、深刻な食糧危機が目の前に迫ってきていると思える。

 我々小売業界も今日を行きぬくことに精一杯になり、八百屋も会社に出れば、1円でも野菜を安く売ろうと知恵を絞る…。

 なんとも皮肉な世の中だと思った。

 重ねて言うが、ミートホープの社長を擁護しているわけではない。
 彼の言っていることは荒唐無稽で支離滅裂。およそ、会社の経営者の発言とは思えない。

 しかし業界の背景には、語弊を恐れずに書いたがこのような実体があり、それぞれが矛盾と格闘している現実があることを書きたかった。
 ミートホープの事件は、改めて我々の業界について深く考えさせられる一件だった。
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by R-130 | 2007-06-26 01:19 | News