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2007年 02月 11日
サッカー:UEFAチャンピオンズリーグ ベスト16プレビュー③ バイエルンvsレアル・マドリー
 プレビュー3回目は、斜陽の2チームを取り上げる。
 強引な世代交代真っ只中のスペインの白い巨人、レアル・マドリーと、2年連続W獲得(Wとは、DFBカップとブンデスリーガの2冠)しながら今シーズン途中で監督が解任されチームも揺れているドイツの名門、バイエルンの1戦だ。
 どちらも動揺が隠せないが、ともに動揺している中にどちらがより優勢なのか、見て見たい。


バイエルン (リーグ成績 11勝6敗4分 4位)

-故障者リスト-(1st legまでに戻れる…○ 微妙…△ 無理…×)
× イスマエル(DF)
△ ハーグリーヴス(MF)


-対戦相手との過去の成績-
9勝5敗2分  26得点19失点 
直近の対戦成績 CL03-04年 Best16 1st 1-1 2nd 0-1 AGG 1-2


-予想スタメン-
        ピサロ      マカーイ

         シュバインシュタイガー

    サリハミジッチ         ファン・ボンメル

             ハーグリーブス

ラーム    ルッシオ  ブァン・ヴイデン   サニョル  

              カーン

■ バイエルンの強み … シュバインシュタイガーのコンバート成功 中盤はダイヤモンド型もフラット型も対応可能に
 正直、バイエルンの強みを探すのは苦労した。デメリットは後述するとして、ポジティブな内容をあえて掘り下げてみよう。
 ドイツW杯で強烈なインパクトを残したシュバインシュタイガーが、チェルシーに移ったバラックの亡霊を払拭してくれるかもしれない。主に左サイドを主戦場としていたシュバインシュタイガーを、マガト前監督かトップ下にコンバート。最初は戸惑いを隠せなかったようだが次第にチームにフィットしているようで、得点・アシストを決めてきているようである。これでチームは中盤をダイヤモンドにも対応を可能にしており、相手の戦術にそれなりに対応することが出来ると共に、自チームのゲームプランをより柔軟に取ることができる様になった。
 また中盤の層もそこそこ厚く、序盤戦のけが人による離脱のダメージを最低限に食い止めた。現状首位からは勝ち点11差をつけられているが、バラック、ゼ・ロベルトの穴を埋めきれないまま負傷者多数で迎えた序盤を考えれば、むしろ上出来だと考えていいだろう。インテルと同居した以外は組み合わせに恵まれた感のあるCLグループリーグでも、序盤にもたつくインテルをしっかりたたいて首位で突破したのも評価して叱るべきだろう。

■ バイエルンの弱み…マガト監督更迭 ポドルスキー不振 ダイスラー突如引退 無失点に抑えきれないDF陣
 ウインターブレイク明けのバイエルンは調子が上がらずついにマガト監督が解任される事態となった。しかし、2年連続W(DFBカップとブンデスリーガのW優勝)を成し遂げたマガト監督をシーズン中に解任するとは、ヘーネスも本当に思いきったことをしたものだ。後任にはかつてバイエルンを率いていたオットマー・ヒッツフェルトが暫定的に指揮を執る。
 しかし、マガト監督が果たして無策だったかと言えばそれは違うだろう。
 前述のとおり、夏のマーケットでワールドクラスの選手へのオファーは悉く蹴られ、バラックとゼ・ロベルトの穴を埋めきれないまま、また大量の怪我人を抱えて望んだ今シーズン、まだマイスターシャーレの可能性を残すポジションに残れていること自体を評価すべきである。
 むしろ、バラックの売却で得た資金を効果的に投入して、バラックの代役足りうるワールドクラスを獲得しなかったフロントの責任の方が重いだろう。
 バラックの代役、と言うわけではないが、未来のバイエルンの象徴となりうる逸材、ポドルスキーもコンディションが上がらない。怪我で戦線を離脱する前も、まったくと言っていいほどインパクトを残すことが出来ずに不遇を囲っている。ピサロと一時は戦力外と噂されたマカーイの奮起で何とか体裁を保っているが、サンタクルスもくすぶり続け、パラグアイの期待の星ドス・サントスもレンタルで放出するなど獲得した逸材も活かせないままだ。
 そして、怪我も癒えてさあこれから、と思われた天才ダイスラーが年明けのウインターブレイク中に突如、引退を表明した。5回にわたるひざの手術を受け、自分のコンディションに自信がもてなくなったの言うのが理由だそうだ。一時は鬱病もわずらい、現役続行出来ないんじゃないかといわれた稀代の天才も、長期の怪我の後はブランクを感じさせないプレーを披露してくれていただけに、本当に残念である。しかも、彼はワードカップ参加出来ずにユニフォームを脱ぐこととなった。本当に残念である。
 最後に、不安定なDF陣も指摘しておきたい。
 ブンデスリーガで今シーズン、完封した試合は片手で数えるほどしかない。1失点はおろか2失点している試合も珍しくない。攻撃陣が何とか踏ん張る中、守備陣が踏ん張れずに成績がついてこないという状況が続いている。


■ 私が監督ならこう戦う 対レアル・マドリー戦
 初戦がサンチャゴ・ベルナベウの為メンバーにもよるが負けない戦い方を実践したい。チームとしてのまとまりにいまひとつ欠けるレアルだが、状況は正直バイエルンもさして変わらない。それより、1プレーで試合の流れを変えられるクラッキがレアルには多数いるため、正直厄介な相手といえるだろう。
 恐らく、ロビーニョ、レジェス、グティの2列目がスタメン濃厚のため両サイドを確実に封じる必要がある。フィジカルに強いと言えないラームとやや衰えを感じさせるサニョールが、ロビーニョやレジェスと言った若手相手にどれだけ対応できるのか…非常に疑問が尽きない。ハーグリーブスが間に合わなければ、こちらも故障明けのデミチェリスにサイドをケアする重役が回ってきそう。ボランチの効果的なケアが試合の出来を左右しそうだ。



レアル・マドリー (リーグ成績 13勝7敗2分 3位)

-故障者リスト-(1st legまでに戻れる…○ 微妙…△ 無理…×)
× シシーニョ(DF)


-対戦相手との過去の成績-
5勝9敗2分  19得点26失点 
直近の対戦成績年 CL03-04 Best16 1st 1-1 2nd 1-0 AGG 2-1


-予想スタメン-

      ファン・ニステルローイ

ロビーニョ     グティ      レジェス


        カゴ     ディアッラ

ロベ・カル  カンナバーロ  エルゲラ  S・ラモス

          カシージャス


■ レアルの強み…世界選抜とも言える選手の質・層 試合の流れを変えられるクラッキの存在 
 監督がカペッロに変わり、良し悪しは別として路線の大幅転換が進められているレアル・マドリー。南米から、マルセロ、ガゴ、イグアインと言った若手の優秀な人材を買い漁る一方で、ロナウド、ベッカムを放出。特にロナウドは冬のマーケットでACミランに売り飛ばすなど、出入りの激しさは例年以上だ。
 マルセロは怪我で出場の見込みは無いが、ガゴにしろイグアインにしろ経験と言う意味ではまだまだ足りず、怪我から戻ってくるグティやエメルソンが、彼らに代わってピッチに入る可能性は極めて高い。スカッドは、国際経験も豊かでまたプレーも折り紙つきの選手が数多く揃っており、単純に能力値がゲームみたいな足し算で計算できるのであれば、間違いなくトップクラスのチームである。
 また、一時は戦力外と宣告され、飼い殺しになりかけていたベッカムも昨日リーガに出場して得意のFKで同点ゴールを記録。チームの連敗を止める活躍を見せるなど、元々このチームには、試合の流れをがらっと変えることのできるクラッキを複数抱えている。チームが機能しなくても、個人技でどうにでもしてしまえるだけの力がレアルには備わっている。



■ レアルの弱み…スペインに馴染まないカペッロ流の4-2-3-1 1年目のチーム転換期を言い訳に出来るカペッロの"狡猾さ"
 具体的な弱点から邪推まで幅広く考えてみたい。
 まず、レアルがバイエルンに対して決定的に劣っている点はズバリ"上背"。主力の平均身長差はなんと7cmもあり、セットプレーに弱いレアルにとっては非常に頭の痛いデータだ。幸いに、精度が1流のフリーキッカーがいないので脅威と言うまでには至らないが、充分に対策を練る必要がある。
 また、これだけの選手を集めながらレアルの戦績が安定しないのは、ずばり、カペッロが掲げるイタリア式4-2-3-1がスペインでは通用していないと言う事実が挙げられる。
 イタリアのセリエAは、まず"守備ありき"のリーグだった。05-06シーズン、最後までスクデッドを争ったACミランとユベントスも、まずは守備ありきのチーム。プロビンチアの多くも、守備に枚数を割いてのカウンターが基本戦術だった。
 そのような守備が優先されるシステムでこそ、カンナバーロもザンブロッタも輝いていた。守備に重きを置くリーガのスタイルと彼らのプレースタイルが合致していたから彼らはイタリアでは成功を収めていた。
 しかし、流れるようなと言うべきか、素早い攻撃的サッカーを信条とするリーガ・エスパニョーラにはイタリア式は通用しなかった。守備から攻撃へと移るモーションが非常に速いリーガ・エスパニョーラ。CBにはロングフィードによる組み立てが要求され、SBには果敢なオーバーラップが求められながらも相手のサイドアタックに備えた守備も必要とされる。カンナバーロやザンブロッタが未だにスペインで苦しんでいる理由はここにある。
 イタリアでは、Wボランチはもっぱら守備専従だった。中盤からサイドの空いたスペースを消し、SBやCBと連携して守備面で数的有利を確保する。ボランチのヘルプがあるから、CBも少々FWにつり出されてでもハードタックルを仕掛け、SBはボランチにサイドのスペースのカバーを任せて攻め上がれたのだ。
 しかし、スペインではボランチの求められている資質が違う。ゲームの組み立てであって、守備ではない。この守備から攻めの流れの違い、そしてボランチの役割が異なるスペインにおいて、イタリア流を貫こうとしたカペッロは見えない壁にぶつかり、現在も悪戦苦闘している。
 エメルソン、ディアッラといった守備的なボランチを大枚を叩いて獲得しておきながら、チームが機能しないと見ると更に大枚を叩いてガゴを獲得するなど、スケールのでかい無駄遣いはレアルだから許されるようなもので、普通のチームでは到底できることではない。カペッロは自分の方針を転換し、少しずつ修正を加えているようだが今のところ結果は芳しくない。
 また、このような過渡期のチームである。レアルがベスト16で敗退する可能性は充分にある。しかし、その理由を「選手の経験不足」や後述するが「ベテランの不甲斐なさ」と言う言い訳で、あっさり難を逃れる可能性は高いだろう。彼は狡猾な手段を持ってして、敗退を正当化する"ロジック"を持っているのである。 



■ 私が監督ならこう戦う…ホームで必勝を期す、できれば2点差以上
 より時間が経てば経つほどバイエルンの怪我人は復帰し、質・両共に厚みを増す。その前になる1st legで、意地でもホームで勝ちたいのがレアルの本音だ。出来れば2点差以上での勝ちが望ましい。
 ゲームの出来を左右する2列目の組み合わせだが、現状だと真ん中にグティ、右にレジェス、左にロビーニョだろうが、真ん中にイグアインで右にグティ。もしくは、モチベーションの高いベッカムをジョーカーとして使う手もなくはない。ベッカムはセットプレーで最高の力を発揮するだろうし、バイエルンのLSBのラームあたりならそれとなくやりあえるかもしれない。ファン・ニステルローイは得点力の高いFWだ。何より精度の高いクロスが飛んでくれば何とかしてくれるだろう。かつてのマンUコネクションの二人がゲームを決めることになる可能性もゼロではないだろう。
 尚、Wボランチはガゴとディアッラ。エメルソンを入れると恐らくゲームが組み立てられないまま終わってしまう可能性も高い。エメルソンは逃げ切るときのオプションとして考えるべきだ。



◇ 勝ち上がり予想 … レアル・マドリーが60%の可能性で勝ち上がり
 個々の能力を足し算で考えれば、レアルが圧倒的に強いがチーム状態を考えても、レアルが6割強で勝ち上がるという無難な予想しか出来ないのが現状だ。バイエルンが、ベストメンバーで対峙できれば、5分5分だったと思われる。
 バイエルンは初戦を引き分けで乗り切れれば勝機がある。次戦の3月には怪我人も更に復帰して、より慎重にメンバーが組める。レアルにとっては、3月になったからと言って戦力的な上積みは望めない。
 とすれば、レアルは初戦で是が非でも勝たなければならない。カペッロはやはり1-0で勝つサッカーをするのか、それとも2nd legを睨み、ある程度攻撃的に行くのか。彼の采配が問われる1戦に鳴るのは間違いないだろう。
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by R-130 | 2007-02-11 02:05 | ∟UEFA CL 06-07