2007年 01月 28日 ( 1 )

2007年 01月 28日
F1:ドライバー"2007年問題"!?
 "2007年問題"というほど大げさな話ではないが、今回は雑誌やサイトでは内容が露骨過ぎてあまり取り上げられない、ドライバー事情について少し。
 昨年、ミハエル・シューマッハが引退したとこにより、所謂"ドライバーの世代交代"が叫ばれ始めた。別にミハエルが引退したからベテランドライバーは引退しなければならない、なんて決まりはどこにも無いのだが、一部のメディアやジャーナリストは、ベテランドライバーへの"引退勧告"ともとれるような論調を展開している側面が発生しているのだ。
 これはGP2の盛況により、優秀なドライバーが目に留まりやすくなったこと、それから各メーカーが、ドライバーのスカラシップに力を入れており、ドライバーがF1へステップアップする階段が構築されつつある、という背景がある。
 ここ数年、例年になくテストドライバー(3rdドライバー)として、脚光を浴びているドライバーが増えているのは、上記のような"能力があれば脚光を浴びることが出来やすくなった背景"があるのは間違いない。
 
 さて少し話題を変えて、今年シート喪失の危機が噂されている"ベテラン・ドライバー"と言われる人たちを挙げてみよう。ちなみに厭味ではないが年齢も付け加えておく。

■ デビッド・クルサード 35歳  レッドブル・ルノー
■ ラルフ・シューマッハー 31歳 トヨタ
■ ヤルノ・トゥーリ 32歳 トヨタ
■ ルーベンス・バリチェロ 32歳 ホンダ
■ ジャンカルロ・フィジケラ 34歳 ルノー

 上記の方々はもうF1シーンに10年以上在籍している重鎮である。彼らに共通しているのはいずれも"次代のワールドチャンピオン"として将来を渇望されながら、夢半ばにして敗れようとしている面々である。さて、彼らの取り巻く状況を考察しながら、八百屋なりに2007年問題についての意見を述べていきたい。

■ デビッド・クルサード
 マクラーレンからレッドブルに移籍するあたりから、「今シーズン限りか」と騒がれ続けて3年目。ミハエルの引退により名実共にF1ドライバーの現役"長老"となった。
 デビューはセナの事故死により、ウィリアムズのNo2ドライバーとして抜擢。随所でNo1ドライバーのデーモン・ヒルより高いポテンシャルを披露。チームから「ヒルより速く走るな!!」という幾度と無い指示と、サラリーがヒルより大幅に少なかったことにブチぎれて、マクラーレン入りしたのは有名な話である。
 しかしその後マクラーレンでチームメイトとなったハッキネンとデビューイヤーはそこそこ争っていたもののその後完全にハッキネンにNo1を掌握されてしまい、事実上ハッキネンのサポートにまわっていたこと。また、ハッキネンの後継者ライコネンにも結局歯が立たず、ライコネンのサポートもままならなくなり、モントーヤの加入で追われるようにレッドブルに移り現在に至っている。
 レッドフルでは、クリエンやドーンボスといった若手相手に、老獪な走りでこつこつポイントを稼いで地位を保ったが今年は、ウェバーという今までに無いスキルを備えたドライバーが競争相手となり、事実上の正念場と成ることは間違いない。ウェバーは昨年結果こそ残せなかったが、ウィリアムズのマシンが壊れなければ間違いなく倍のポイントを稼ぐような走りを見せていた。予選の一発の早さにも定評がありこの部分でも、クルサードは大きく遅れをとっている。本人はまだまだ現役を続けられると声高に宣言しているが、F1でもトップに上り詰めようとしているレッドブルが、ドライバーラインナップをいじってくるのは想像に難くない。クルサードが今年でシートを喪失する可能性は低くはないと見られている。


■ ラルフ・シューマッハー
■ ヤルノ・トゥルーリ
 天才ミハエルの弟として脚光を浴びたラルフ。フォーミュラ・ニッポンのタイトルを手土産にジョーダンからF1デビューを果たした。後述のフィジケラとチームメイトになってチーム内で激しいバトルを繰り返し、フィジケラから走りが危険すぎると度々批判を受けていた側面を持つ。
 正直兄と違い走りは荒削りで、兄と決定的に違うのは精神的なムラか大きく、良い時と悪い時の差が激しすぎるのがネックになり、残念ながら兄の領域に足を踏み入れることも無くキャリアの晩年を迎えつつある。ウィリアムズ在籍時代には、2001年のカナダGPの兄弟対決は未だ語り草だが、気持ちが乗らないときはリタイアや低パフォーマンスに終始することも珍しくない。トヨタに移籍してもその癖は変わらず、トヨタではトゥルーリよりシートを喪失する危険性の高いドライバーである。
 今年の序盤3戦の走りを見て上層部はラルフと契約継続のオプションを行使するか決める模様だ。パドックでも、ラルフと契約しているトヨタに、首をかしげている人間が少なくないという。ラルフも今年でレギュラーのシートを喪失する可能性を充分に秘めたドライバーだ。
 ヤルノ・トゥルーリは、これまで多くのドライバーが経験しているミナルディからテビューの、"フラビオ・コネクション"トライバーである。当時、プロスト・無限ホンダのオリビエ・パニスのピンチヒッターでシーズン中にミナルディからレンタル移籍したトゥルーリがパニスに違わないタイムを出しことで一気に脚光を浴びた。その後、ジョーダンやどん底のルノーなどで陽の目を見ないままキャリアを棒に振りトヨタにたどり着き現在に至る。トヨタでは05年の躍進の原動力として各方面からの賞賛を集めたが、やはり彼もサーキットによる得手不得手が激しく、パフォーマンスが安定しないという欠点を抱えている。
 昨年は、ラルフより先に放出されるのではないかという噂が流れたが貢献が認められ何とか契約にこぎつけた。しかし今年ラルフより不甲斐ないパフォーマンスに終始すれば間違いなく放出されるであろうトゥルーリ。トヨタはこのレギュラー2人に過酷な椅子取りゲームを強いている。そして何より、今年のトヨタが低調に終われば、ドライバーはおろか、トップが全て入れ替わるという粛清人事が断行されるという噂がまことしやかにささやかれている。TF107の出来とドライバー次第でトヨタは大きく様変わりする可能性を秘めているのだ。


■ ルーベンス・バリチェロ
 デビュー当時から老け顔でベテランっぽく見えたバリチェロ。しかし、実力は折り紙つきで、非力なジョーダン・ハートで天候を味方につけたという理由はあれスパでポールポジョンを獲得したり、新興のスチュワートチームで99年にはドライバーズランキング7位等若い時代には大きな活躍を見せていた。それが認められフェラーリが、アーバインの後釜としてNo2ドライバーにオファー。バリチェロも当時相当悩んだと後に告白しているがこのオファーを受け、長きに渡りミハエルの下で屈辱を受け続けたのは有名な話である。
 その本人が我慢の限界に達し、ホンダに新天地を求め今に至る。
 しかしホンダに加入当初は、フェラーリとのタイヤやブレーキ特性の違いでバトンに大きく水をあけられていた。この点を厳しいジャーナリストは、「本当のプロフェッショナルならすぐに適応して見せるべきだ。しかもそのような言い訳をするとは、恥ずかしい話だ」とばっさり切り捨て、以降バリチェロの交代論は、チーム内外でくすぶり続けているという。昨年も、"デイヴィッドソンと交代しろ!!"という意見が一部から噴出し、ドライバー人事が紛糾しそうになったいきさつがあったらしい。シーズン後半、バリチェロがポイントに貪欲になったのは、車に慣れたというだけでなく、シート喪失の危機を背中に感じていたからだという。ハンガリーGPのエクストリームウエットでのスタートは、自分のシートを確保する為の"賭け"に出た、という噂もあるほどだ。
 昨年はバトンが初優勝を果たし、第3期ホンダF1活動においても初優勝を果たした。今年は昨年以上のリザルトが求められているし、何よりバリチェロにも優勝が求められるだろう。バリチェロも何かとバトンと比較されることが多くなるはずだ。今年、バトンにポイントで大きく水を空けられるような事になれば…、バリチェロのシートも危ういといわざるを得ない。


■ ジャンカルロ・フィジケラ
 フィジケラも、ミナルディからデビューした"フラビオ・コネクション"の1員である。ジョーダン→(ベネトン)ルノー→ジョーダン→ザウバー→ルノー、と結構な苦労人でもある。
 ジョーダン時代はラルフと張り合いながらも将来の明るいドライバーだった。イタリア人としてワールドチャンピオンを期待されていた。しかし、落ち目のルノーに移籍したのが運の尽きか、その後はザウバーやチームが崩壊寸前のジョーダンに移籍したりと散々な道のりの中、03年インテルラゴスで雨天による大クラッシュによるレース中断→75%ルールによるレース成立をめぐるトラブルで一度は取り消されたが、最終的に運も味方につけてジョーダンで初優勝を遂げている。
 しかし、05年ルノーに返り咲きアロンソとコンビを組んだことでフィジケラの評価は急落する。何とアロンソは殆どのレースでフィジケラを寄せ付けない速さを見せ付けたのだ。アロンソが負けたレースの殆どが、内外のトラブルによるものでイコールコンディションではまず歯が立たなかった。これで彼は批判の矢面に立たされることとなる。
 今年は、大きな比較対象だったアロンソがマクラーレンに移籍し、ヘイキ・コヴァライネンとコンビを組む。フィジケラにとっては今年、今までに無いプレッシャーを背負いシーズンに臨む事になるだろう。勝利を義務付けられ、コヴァライネンの成績を常に上回ることが義務付けられているフィジケラ。ワールドチャンピオンや、コンストラクターずチャンピオンにルノーを導かなくてはならない。2年間アロンソにコテンパンに負け続け、負け癖のついているフィジケラに、このプレッシャーを力に変えられるだけの能力を有しているのだろうか。まさに彼は今シーズン試されている立場にあるのだ。
 コバライネンが今年の体制発表後に「ルノーは本当はライコネンが欲しかったんだ」と漏らされた。暗にフィジケラでは信用できないといわれているようなものだった今期のテストドライバー、ネルシーニョ・ピケの父であり、ワールドチャンピオンにも輝いたネルソン・ピケは「今年、フィジケラが不甲斐なければ、うちの息子がステアリングを握る約束をしている」と、方々に吹いて回っているそうだ。フィジケラの敵は身内にもいる…まさに四面楚歌のフィジケラに未来はあるのか?今期の見所のひとつであることは間違いない。


 さて、長々と否定的なことを書いてきたが、別にベテランドライバーは新鋭にシートを明け渡せというつもりは毛頭ない。ただし、条件がある。それは、やはりそれなりの結果を出さないことにはどうしようもない、ということだ。メディアの1部の論調がこうなってしまっているのも、ひとつはF1を盛り上げなくてはならないベテラン勢に不甲斐ない成績が続いているからである。それはミハエルという稀代の天才がいたという条件を差し引いても、である。
 やはりつまらないミスが多い、走りに覇気が感じられない。ベテランらしい老獪な走り、といえば聞こえがいいがただの運び屋になってしまっている感も否めない。
 世代交代論が叫ばれるのはこうした背景もあるからである。何も若手がいいからだけで、叫ばれたりはしないはずだ。
 八百屋も世代的には、ベテランドライバー世代である。リアルタイムに彼らの走りを見てきた1ファンとしては、1人また1人とこの世界を去っていくのを何かしら、こう寂しい気持ちで見つめているのも事実である。
 しかし、それと同時にF1はモータースポーツの最高峰でもある。言い訳の出来ない実力主義社会なのだ。
 彼らがまだまだ活躍するには、ヤングジェネレーションを成績で黙らせるしかないのである。
 速い者が遅い者を凌駕する…昨今のF1は金銭面も絡み純粋にその構図が成り立っているわけではないが、それでも淘汰の世界であることに変わりは無い。
 ベテランドライバーは自分の置かれている立場を良く考え、サラリーアップを目指して時間を浪費するのではなく、自らをもっと磨く術に時間を割くべきだろう。コスト削減が叫ばれている昨今、高価なベテランドライバーより安価な新鋭ドライバーを重用するチームが現れても何ら不思議ではない。
 八百屋としては、現状を認識してもらうことをお願いしつつ、更なる飛躍をベテランドライバーたちに期待したい。
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by R-130 | 2007-01-28 22:47 | ∟F1 2007 Other issue