2007年 06月 13日
F1:第6戦 カナダGP決勝 不安、危機、絶望、そして歓喜…
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1 L・ハミルトン マクラーレン 1:44:11.292
2 N・ハイドフェルド BMW + 4.300
3 A・ブルツ ウィリアムズ + 5.300
4 H・コヴァライネン ルノー + 6.700
5 K・ライコネン フェラーリ + 13.000
6 佐藤 琢磨 スーパー アグリ + 16.600
7 F・アロンソ マクラーレン + 21.900
8 R・シューマッハ トヨタ + 22.800
9 M・ウェーバー レッドブル + 22.900
10 N・ロズベルグ ウィリアムズ + 23.900
11 A・デビッドソン スーパー アグリ + 24.300
12 R・バリチェロ ホンダ + 30.400
Did not finish
13 J・トゥルーリ トヨタ + 12 laps
14 V・リウッツィ トロロッソ + 15 laps
15 G・フィジケラ ルノー + 18 laps
16 F・マッサ フェラーリ + 18 laps
17 C・アルバース スパイカー + 21 laps
18 D・クルサード レッドブル + 35 laps
19 R・クビサ BMW + 43 laps
20 A・スーティル スパイカー + 48 laps
21 S・スピード トロロッソ + 61 laps
22 J・バトン ホンダ + 70 laps

(文中のタイムや写真はF1-Live.com及びGPUpdate.netを参照)

 とにかく色々な事がありすぎた2007年のF1第6戦カナダGP。
 御託は後から並べて、まずはレース展開を追いかけてみたい。
(今回はすげー長いです(-"-)それでも良いと言う方は是非付き合ってくださいましm(__)m) 


 スタート。
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 3番手のハイドフェルドが好スタートを切るが、ハミルトンがインを抑えてその後行き場を失う。
 アロンソはアウトから被せようとするも、コースコンディションが最悪でオフラインに乗ってしまいNoGripで曲がりきれずに直進…昨日の予選の2回目のアタックといいこのミスといい、アロンソには高くついてしまったミスになった。アロンソはハイドフェルドを先に行かせて、自身は3位に転落。これでハミルトンとの間に壁が出来てしまい、ハミルトンが1周コンマ5以上の差をつけて独走状態に。
 ライコネンは2コーナーの立ち上がりでマッサと軽く接触し、ここでロズベルグに前に行かれ6位。キミも悪い展開にはまり込む。この後も、クラッシュの破片を拾い、より難解なレースへと道が進んでいく…

 9周目。
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 スピードがヴルツと接触して、リタイアに追い込まれる。
 スピードはオールドピットヘアピン手前の芝生に車を止める。
 …これが惨劇の複線になるとは、この時点では誰も予想だに出来なかっただろう。

 19周目。
 アロンソとマッサが1秒以内の接近戦状態になっていたが、アロンソが1コーナーでまたもアウトのオフラインに乗り上げ直進。マッサが労せずに3位へとポジションアップ。

 20周目。
 ハイドフェルドが上位陣では先陣を切ってピットに。やはり軽かった!!
 21周目にはハミルトンも1回目のスケジュールストップ。今回のピットのプライオリティはハミルトンにあったため、ハミルトンは先にinを決断するもこれが大正解と判明したのはレースが終わってからのことだった。

 "この後上位陣が続々とピットインしながらも、アロンソはマッサにもふたをされてしまい、レースは淡々と流れてハミルトンが初優勝を飾るんだろうなぁ…"
と、まどろみながらそう思っていた自分。しかし、22周目のSCを機に、レースは大波乱の様相を呈することになる。

 22周目。
 
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 スーティルが4コーナーでヒットし、これを除去するためにこのレース初のSCが入る。
 ここで割を喰ったのがこの周終了後、スケジュールストップになっていたアロンソとロズベルグ。
 今年からSC時の新しいルールで、SC導入後は、SCがラップリーダーを抑えて隊列が整うまでピットレーンが閉鎖されるため(それを判断するのはレースコントロール)SC導入直後はピットに入っても給油が出来ないというルールに変わっていた。
 ところがアロンソとロズベルグは本当にガスが残っておらず、ガス欠の危機が迫っていたため、ペナルティ覚悟で給油を敢行。のちに2人には10秒間のストップアンドゴーのペナルティーが課せられることになる。

 26周目。レース再開。
 しかしこの周に、近年でも稀に見る大クラッシュが発生する。
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 オールドピットヘアピンの侵入前、トゥルーリに並びかけようとしたBMWのクビカが、トゥルーリと接触。マシンは制御不能になり、280km/hのスピードでイン側のコンクリートウオールに接触。この時、9周目にマシンを止めていたスピードの左フロントタイヤにクビカのマシンが乗り上げて宙に浮いて大クラッシュに発展!!
 その直後を走っていたリウッツィのオンボードが一部始終を捉えていた。
 あれを全て見せ付けられたリウッツィは集中を保つのが極めて難しかっただろう。
 実際リウッツィは56周目に最終シケインでマシンの左サイドをウオールに当ててリタイア。4回目のSC導入の原因となっている。

 クビカの救出と事故処理に長引き、34周目にレース再開。
 ここで琢磨はオールドピットヘアピンで、ミスをしたライコネンをパスして10位に上昇。
 3周後にアロンソとロズベルグがペナルティを消化。アロンソも12位まで落ち込むが、ここから怒涛の追い上げを見せていく。

 41周目。
 SCのスロー走行などで燃費をセーブし、ここまでピットに入らず3位まで上昇したラルフがピットへ。2回目のSCOut後、このラルフとその後のウェバーが3位以下をしっかりブロックして、ハミルトンとハイドフェルドの後に大きなギャップが出来ることとなる。
ラルフは、1ストップを選択するかと思いきや2ストップだった。

 43周目。
 アロンソは怒涛の追い上げで8位まで上昇。
 6位琢磨、7位ライコネンの背中を追いかけ猛チャージを続ける。

 48周目。ハイドフェルド2回目のストップ。
 最後はエクストラソフトに履き替えてコースin。ウェバーが後をホールドしてくれたおかげでウェバーの後の3位で復帰。

 49周目には、ハミルトンが2回目。こちらもエクストラソフトに履きかえる。
 スケジュールは54周目だったが、SCの導入を恐れて早めに招き入れたのが今回も大正解だった。

 51周目。
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 アルバースが7コーナーのシケインでミスをして自分でマシンにダメージを追う。
 大量のパーツが飛び散り、本日3回目のSC導入。
 この間に、琢磨がピットへ。もたつきはあったが、エクストラソフトに履きかえる「裏技(後述)」を使い、給油はペナルティーになるため行わずにコースへ復帰。一時的に大きく順位を落とす。

 52周目。
 何とマッサとフィジケラにブラッグフラッグの裁定。
 1回目のSC時のピットインの時の、ピットアウトの信号無視。
 しかし、失格とは厳しい裁定だった。
 マッサとしては、チャンピオンシップに暗い影を落とすノーポイント!!

 54周目。
 ピットレーンがオープンになると、コース上でライコネンに頭を押さえつけられていたアロンソと
ライコネンが同時にピットへ。クルーの根性勝負に。
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 クルーの気合はマクラーレンに軍配。先にピットinしたライコネンだったが、先にピットアウトしたのはアロンソだった。
 琢磨もこのタイミングでピットへ。タイヤをハードに戻して残り周回に命運をかけることに。

 55周目。レース再開。
 ADがアロンソにトラップを仕掛ける(コントロールライン通過前にアクセルを戻してスローダウンしアロンソに抜かせて、ペナルティーを取らせようと言う罠)も、アロンソはこのトラップに引っかからなかった。流石である。

 56周目。
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 前述の通り、リウツツィが最終シケイン出口でマシンをヒットさせてリタイア。これを除去するため本日4回目のSCが出動。

 59周目。
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 ピットレーンオープン後にトゥルーリがピットへ。
 ピットアウト後、コース合流点の右カーブでグリップ力を失い曲がりきれずにマシン左側をタイヤバリアに激突させてリタイアに追い込まれる。

 61周目。リウッツィのマシン除去に手間がかかりようやくレース再開!!
 しかし、ここからが真のレースのハイライトである!!
 まずアロンソがラルフを交わして7位。以下8位ラルフ、9位が琢磨。
 しかし3位バリチェロはもう1回のピットがあるため、実質の順位は4位のヴルツ以降が1つ繰り上がることになる。

 63周目。バリチェロがピットイン。ヴルツが3位に浮上。
 この時点で琢磨は8位へ。このまま終われば1ポイント獲得である。
 この辺から、国際映像が琢磨を捕らえる回数が飛躍的に増える。

 そして67周目。いよいよ琢磨のオーバーテイクショーが始まる。
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 まず、ラルフを最終シケインでしとめる。7位に浮上。
 この時のアロンソとの差は1.2秒。
 しかし68周終了時にはその差が0.4秒に縮まる。
 コース上の至る所でアロンソより速いところを見せ付ける琢磨。
 確かに、エクストラソフトを無駄遣いして(キミを追い回すため)グリップ力を失っているアロンソと、このサーキットではロングランで安定したラップを得られるソフトタイヤと言う格差はあったかもしれない。
 しかし、方や昨年最下位を走行していたチームと、2年連続ワールドチャンピオンのアロンソとの一騎打ちである。盛り上がらないわけがない。
 オールドピットヘアピンを抜群のコース取りで通過し相手のスリップに入る。
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インを守ろうとするアロンソに対して、果敢にアウトから仕掛ける琢磨、そして鮮やかにオーバーテイク!!
 琢磨が自力でレースをして6位3ポイントを掴み取った瞬間だった。
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 歓喜するサーキットの観客たち。SuperAguriの編み笠がとても渋い。



 リザルトは、優勝はデビュー6戦目でポールトゥウィンを果たしたハミルトン。2位にハイドフェルド、3位に大どんでん返しのヴルツ。第4位にコヴァライネン。以下ライコネン、琢磨、アロンソ、ラルフの順となった。
 予選のエントリーで、チームメイトに水を開けられているヴルツ、コヴァライネン、ラルフには頑張ってもらいたいという風にアップした矢先だけに、その人たちに聞こえたのだろうか?(そんなわけはないか…)


 まず気になったのはクビカの様態について。
 一時は骨折説も飛び出しが、結論は脳震盪と手首の捻挫と言う風に、見た目からすれば信じられない軽傷で済んだのは、不幸中の幸いだったと言えるだろう。
 月曜日にはドクターの許可をもらって退院。自力で運転して帰ったとか。
 BMW側も、クビカを起用するか、TDのヴェッテルやグロックにするかは発表を先送りにしており、6/14(木)に正式発表するようだ。
 本人はレースに出たくてうずうずしているようだが…流石に大事を取るべきではないかと思わずにはいられない。


 次にSC導入時の新ルールについて。 
 今回4回のSC導入により、今シーズンからのSC導入時のルールの改正点がよくわかった。隊列が整うまでは、ピットインでの給油は禁止(タイヤ交換はOK)ピットレーンがクローズ、と言う表現を実況ではよく用いていた。また周回遅れは、レースコントロールからの指示が出れば、SCを追い抜いて隊列の一番後ろについて同一ラップに戻ることが出来る。但し今回はレースコントロールの指示を待たずにニコやADがSCを追い抜いて勝手に列の最後尾につけていた。
 この件については私見を交えながら、別の日に改めて取り上げることにしたい。


 次に、ハミルトンのデビュー6戦目でのポールトゥウィンについて。
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 我々がまたしても偉大な歴史が刻まれようとしている瞬間の目撃者になりつつあることは間違いない。昨年まで、数多くのレコードを塗り替え長岐に渡りF1のトップであり続けたミハエル・シューマッハが刻み続けてきた歴史の目撃者になってきた。最後の2年間はアロンソにタイトルを奪われながらも、まだトラックの上では未だ最速、未だ最強を見せ付けてくれていた。
 その彼がいなくなった今年、F1界の更盛を危惧する意見もあったが、それはまったくの杞憂に終わった。アロンソでも、ライコネンでも、そしてマッサでもなく、デビュー1年目の新人が間違いなく今年のF1サーカスを引っ張っている。
 初戦から常にポディウムの上に立ち続け、あれに荒れた第6戦のモントリオールを、1人だけ"another planet"の世界で独走し、危なげなく初優勝をポールトゥウィンで飾る。新人とは思えない安定感すら感じる。
 チャンピオンシップは、1位ハミルトンで48ポイント。以下アロンソが40ポイント(-8ポイント)、マッサが33ポイント(-15ポイント)、ライコネンが27ポイント(-21ポイント)と、ここに来てポイント差が大きくばらけてきた。誰がこのような展開を予想したものか。
 個人的に、だからハミルトンがデビューイヤーにワールドチャンピオンになる、と言うつもりはない。しかし、ライコネンとの差は21ポイント。シーズンはまだ10戦以上残っているがこの差は早くも如何ともし難い差になりつつある。
 果たして、またも新たな歴史が刻まれるのか。我々がその目撃者になり得る可能性が充分に出てきたことは間違いない。


 そしてやはり触れずにはいられない、SuperAguri、佐藤琢磨の6位入賞について。
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 アロンソと琢磨の間に、タイヤを含めたマシンの色々な事情が横たわっていたとは言え、2年連続のワールドチャンピオンを、トラック上で堂々とオーバーテイクしての6位は素晴らしいのひと言だ。日本人だからだろうが、正直、ハミルトンよりインパクトの大きい出来事だった。昨年まで常にテールエンダーだったチームが、トップコンペティターと争えるまでに1年でレベルアップしたのだからただただ驚くしかない。
 本当にあのオーバーテイクは絶叫モノだった。ありがとう、琢磨!!
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 はいはい、クルーも思いっきり羽目を外しちゃってください。


 最後にTOYOTAの冨田会長の辞任について。
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 このレースを最後に冨田氏もサーキットに姿を現すことはなくなるだろう。 
 間違いなく近年の成績不振の責任を取らされた形だ。大企業にありがちなドライな人事である。
 後任には山科氏が決定しており、現状もすでに山科氏がチームを統制している。
 因みに冨田氏はこの後、FSWの会長に就任することが決定している。
 なんか、天下りみたい…


 さて今週末には第7戦USAGPがインディアナポリスで開幕する。
 連戦と言うことと、サーキットの特性が高速寄りと言う性質が若干似ているということもあり、似たような結果になる可能性が極めて高い。
 フェラーリは、ドライバー・コンストラクターズ選手権において赤信号が点滅している。
 彼らがこの危機をどう乗り越えようとするのかに期待したい。
 そして好調のSuperAguri。琢磨の思い出の地で、更に高みへと歩を進めることが出来るのかにも併せて注目していきたい。
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by R-130 | 2007-06-13 02:57 | ∟F1 2007 Final


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