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2007年 05月 06日
サッカー:UEFAチャンピオンズリーグベスト4 2ndleg 決勝はACミランvsリバプール
 もうかなり前の話題になりつつあるけれど、触れないわけには行かないので簡単に。
 リバプールvsチェルシーは知将同士が繰り広げる息詰まるゲーム展開に、ACミランvsマンチェスターUは、予想以上に大差のついた試合になってしまった。


○ リバプール 1 --- 0 チェルシー ●  at ハイベリー
AGG1-1となり、アウェーゴールでも同点の為、PK戦にもつれ込み4-1でリバプールが決勝進出
【得点者】 アッガー ('22)
【警告・退場】 A・コール(b) アッガー(b) ゼンデン(b)


■ リバプール 4-4-2

     カイト    クラウチ

ゼンデン            ペナント

  マスチェラーノ  ジェラード

リーセ アッガー キャラガー フィナン

         レイナ
【交代】

 ペナント   →   アロンソ ('78)
 ベラミー   →   クラウチ ('91)
 ファウラー   →   マスチェラーノ ('118)

 用兵最大の驚きはゼンデンが続けて起用されたこと。しかし、このベテランが結果的にはいい仕事をしたのだからベニテスの起用は間違いではなかったということか。ダイナミズムを生み出すマスチェラーノを起用し、アロンソをベンチスタートさせるという贅沢な起用にはため息。何とも贅沢。
 ペナント、ゼンデンとクロッサーを入れたことでクラウチの高さを活かす攻撃を標榜したもののこの戦術は型にはまらなかった。最後のファウラーはPK要員???


■ チェルシー 4-3-3

  カルー   ドログバ   J・コール

     ランパード   ミケウ

         マケレレ

A・コール テリー エッシェン フェレイラ

          ツェフ
【交代】

 J・コール   →   ロッベン ('98)
 カルー   →   ライト・フィリップス ('107)
 マケレレ   →   ジェレミ ('118)     

 バラック、カルバーリョに続きシェフチェンコがでん部の痛みでベンチから外れるという悲惨な状態。ジョーカーのロッベンも病み上がりで状態が良く無く、殆ど采配らしい采配が揮えない最悪の状況がシーズン終盤にやってきてしまう。
 いつもは思い切った采配を取るモウリーニョが、ロッベンを投入したのが98分と言うところに深い苦悩が伺える。


 22分。リバプールはFKのチャンスをサインプレーでアッガーが得点する、という予想だにしない展開で早くもスコアをイーブンに持ち込む。
 その後は膠着した展開が続き、1点が勝負を決めそうな展開に。
 チェルシーは、相変わらずの困ったときのドログバさまで、ロングフィードを多用するも、今回は前回の二の舞はふまじ、とキャラガーとアッガーがほぼ完璧に抑え、仕事らしいし仕事をさせてくれなかった。また、選手が疲労のピークに達する中、比較的疲労の度合いが軽いであろうJ・コールの出来が悪かったのが最大の誤算だったのではないか。
 しかし、DFラインは手負いの中、その後リバプールにゴールを割らせず120分集中したプレーを披露してくれた。カイトやクラウチが後半、際どいシュートを放った以外はしっかり守り、崩されるような決定的なシーンは無かった。
 
 やはりリバプールは、戦前に指摘したとおり、引いて守るという相手に対する有効策を所持していなかった。クラウチの高さも活かせずじまい、と言うよりはプレミアではクラウチはしっかり攻略されている。恐れずに足らずなのだ。しっかり寄せられちゃうと凡庸な選手になってしまうところも相変わらずだ。
 誰かが、チェルシーに対して6割のボールポゼッションを誇ったリバプールは素晴らしい、と評価していたブログがあった。しかしそれは視点が違う。チェルシーはしっかり守ってカウンターと言う以外に手立てのない面子のため、あえてじっくり引いていただけのこと。バラック、エッシェンを中盤に配した4-4-2なら、ポゼッションでここまで水をあけられるということもなかったはずである。

 結局、リーグ戦、FACup、CLと3足の草鞋(カーリングカップを含めれば4足)をこなし、さらには直前のリーグ戦でもボルトン戦に負傷者を出し、総力をつぎ込みながらドローに終わったという、肉体的精神的疲労感(リーグ戦の優勝がほぼ絶望になったのも大きな精神的疲労に繋がったと思う)に支配されたチェルシーと、リーグ4位以内を決めカップ戦にも早々に敗退し、この試合だけにコンディションを整えれば良いリバプールとの差はやはり存在した。せめて怪我人だけでも帰ってくればまた違った展開にもなっただろうが、これだけ怪我人も出てしまえばどうしようもない。

 結局一昨年同様、CL準決勝で、リバプールに屈し、チェルシーのそしてモウリーニョの欧州一の挑戦は終わりを告げた。



○ ACミラン 3 --- 0 マンチェスター・ユナイテッド ●  at サン・シーロ
AGG 5-3でACミランが決勝進出
【得点者】 カカ('11) セードルフ('30) ジラルディーノ('78)
【警告・退場】 アンブロジーニ(b) ガットゥーゾ(b) ロナウド(b)


■ ACミラン  4-3-2-1

         インザーギ

     カカ         セードルフ

アンブロジーニ  ビルロ  ガットゥーゾ

ヤンクロフスキ カラーゼ ネスタ オッド

            ヂダ
【交代】

 インザーギ   →   ジラルディーノ ('67)
 ガットゥーゾ   →   カフー ('85)
 カカ   →   ファヴァッリ ('86)

 お馴染みの4-3-2-1にワントップは勝負強さに定評のあるインザーギ。
 マルディーニが怪我で代わりにカラーゼがCBを勤めるもこれはむしろプラス材料。
 ここに来て選手のコンディションも上がってきており、まさにCL1本のミラン。
 直前のリーガもターンオーバーで主力はこぞって温存。


■ マンチェスター・ユナイテッド  4-2-3-1

         ルーニー

フレッチャー  ギグス    ロナウド

      スコールズ キャリック

エインセ ヴィデッチ ブラウン オシェイ

       ファン・デルサール
【交代】

 オシェイ   →   サハ ('77)

 こちらも満身創痍のマンU。
 結局ギャリー・ネヴィル間に合わず、リオは帯同はするもベンチ。何とか無理矢理ヴィデッチを間に合わせてLSBにエインセ。
 2トップにしなかったのは警戒の現われだったのか?もう少し早く動いてもよかったような気もするが…しかしこのコンディションとメンバーでは焼け石に水か。


 ミランvsマンUは思った以上に大差がついてしまった。
 豪雨の中キックオフし、序盤からミランが押せ押せで展開。
 カカとセードルフが個人技で同じような所にゴールを決めて勝負有り。
 後半には、今季ミラン最大のブレーキと言われているジラルディーノが、カウンターから抜け出して駄目押しの3点目を決められ、引導を渡された。
 実況や解説が、雨でマンUは思い通りのプレーが出来なかったというがそれも違うと思う。
 彼らは、選手層も非常薄い中で、しかも直前のリーグ戦で難敵エヴァートンに、2-0から4点入れてひっくり返すという大味な試合をやってのけた。それに相当疲労していたのだろう。それに雨で重いピッチにスリッピーなコンディション。そして、リバプール同様、ここに照準を合わせてきたミランが相手。もちろんマンUは直前も層が薄く総力戦。やはり現状での差はいかんともしがたかった。しかし、これももっといいコンディションで試合をさせて上げられれば、結果は恐らく違ったものになったであろう。


 さてもここからは個人的主観と愚痴を言わせてもらいたい。

 ACミランの場合、4-3-2-1と言う布陣は、現状のスカッドとFWの不甲斐なさを鑑みればベストの布陣と言うことになるだろう。アンチェロッティも手持ちの駒で最大限にやりくりしているという評価も与えられる。

 しかし、これはサッカーの見方の問題であって、個人的意見丸出しなのを前提に言わせてもらえば、どうにも面白いサッカーをしているとは言い難い。
 特に守備的なMFを3枚並べる布陣。ピルロはまあいいとして、ガットゥーゾ、アンブロジーニ、ブロッキ…この辺が2枚、3枚と並ぶとどうもうんざりしてしまう。やり方としては、SBとDMFで中盤の選手を挟み込んで数的優位を作り出して、ボールをダッシュした後は素早く、ピルロ、カカ、セードルフに回す。とてもシンプルと言えば聞こえがいいが、スペクタクルには程遠いサッカーだ。
 攻撃のパターンは、カカやセードルフのドリブルに、両SBのヤンクロフスキやオッドが絡んでくるのだが、この2選手は如何せんクロスの精度が高くないため、クロスからの攻撃、と言うよりはそれをクリアしたボールに2列目がしっかり拾ってチャンスをつくる、と言うパターンが極めて多い。
 後は、カカの個人技、これに尽きる。もし今年のミランにおいて、カカがコンディション不良であればCLはベスト16か良くても8で敗退していたはずだ。
 ガットゥーゾやアンブロジーニやブロッキが凡庸な選手だと言っているわけではない。彼らは"つぶし役"や"汚れ役"と言われるDMFの中においても素晴らしい仕事をしていると思う。しかしそれを2枚も3枚も並べてボールを奪った後、自らボールを展開すると言うわけでもなく素早く近くの展開力のある選手にボールを預ける…このサッカーはやはり見ていて退屈極まりない。
 ミランが得点力不足にあえぐのは、FWの不出来だけではない。この攻め手に人数をかけないシステムのために、FWに訪れるチャンスが少ないのだ。よってジジやオリベイラは点を決めなければならない焦りから、自らのフォームを崩したと言う背景があると自身は踏んでいる。今シーズン、ミランのFWにかけられたプレッシャーは計り知れないものがある。守備的布陣による数少ないチャンスを決めきれなかったがためにかけられる罵声は非常に大きなものがあった。
 しかし得点力不足は決してFWのせいだけではない。確かにジジは非常に多くのチャンスを棒に振ったかもしれない。しかし、FWがもっと楽に前を向いて仕事を出来る環境を作るのも、監督の手腕である。非常にきわどいチャンスを物に出来なかったからと言って叩かれることが非常に多かったミランのサッカーに、今年はあまり賛同できないというのが持論だ。


 リバプールの場合は、故障者が少なくなかったこと、獲得した新戦力が期待通りの活躍を見せなかったことなどを差し引いても、失望の1年だった。
 ニューカマーでは、やはり噂どおりカイトは八面六臂の活躍を見せてくれたが、それ以外は期待外れに終わった。ペナントは最後までチームに馴染むことが出来ず、ベラミーも良いときもあったが年間を通してのパフォーマンスとしては寂しいものがあった。
 そして何より酷かったのはリーグ前半戦。戦っている選手たちに勝とうとする気迫が非常に少なかった。アンフィールドではいいのだが、アウェーでは泥沼…このポテンシャルの不安定さは何よりチームそのものがまとまっていない証拠である。このまとまりのなさが、マンUやチェルシーとは圧倒的違う、リバプールの欠点だった。
 今年はW杯後のシーズンと言うことで、多くの選手が疲れを引きずって開幕を迎えたと思われる。ジェラードも昨年ほどの輝きは見られなかったのは事実だ。しかし、W杯に多くの選手が出場していた、マンUやチェルシーの出来を見れば、リバプールの出来には大きな不満が残る。トーナメント方式に強いベニテスのやり方は評価するが、リーグ戦ではイマイチ成績を残せないベニテスを、監督トータルの手腕としては評価できない部分がここにある。

 セリエAリーグ4位のACミランと、プレミアリーグ3位のリバプールが、欧州最強を争う…
 ノックアウト方式の決勝トーメンとでは、何でも起こりうるだけにこのような事実だけを見て、これが欧州一決定戦だなんておかしい、というつもりは微塵にも無い。
 ただ、文字として表記する違和感以上の違和感を今年のファイナルに感じるのは、自分だけだろうか。
 チェルシーとマンUに決勝に残ってほしかったからという贔屓の観点は多分に入っていると思うが、それでも準決勝はもっといいコンディションで戦わせたかったと思う八百屋である。

 そして、願わくばFACupやCLの決勝のように一発勝負の中で、名将と素晴らしい選手を揃えた両チームの意地の一発勝負を見たかった(リーグ戦の直接対決は、勝ち点差如何では引き分けでも言いと言う思考も働くので真剣勝負になりにくい)。
 FACupでは今季、限界まで戦い抜いた2チームの最後の真剣争いが見られる。それを大いに期待したいところだ。

        

by R-130 | 2007-05-06 23:12 | ∟UEFA CL 06-07


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