2007年 04月 06日
サッカー:モウリーニョ考察
 今年はチェルシーに怪我人が続出したと言うこともあるが、モウリーニョに対する風当たりが近年にないほど強まっている。まあ、モウリーニョの場合彼の性格的な部分によるものも大きいと思うが。断っておくが彼が全ての人に対して攻撃的であるといっているわけではない。1部のイングランドの心無いメディアが執拗に騒ぎ立てていることに、モウリーニョも歯に衣を着せぬ発言で応戦しているのが、過剰に取り上げられているだけだと八百屋は考えている。
 さて、その今年のモウリーニョのシステムは、昨年の4-3-3メインから4-4-2との併用と言う形を取っている。パターンとして、前半は4-4-2、後半の途中から4-3-3にシフト、と言う形が良く見受けられる。この2年で完成の域に近づいていた4-3-3をあえて置いておいて、4-4-2を使用し続ける理由はどこにあるのだろうか。今回はこの辺を考察したい。尚、アブラモビッチにシェバとバラックの起用を義務付けられたから、と言う理由については、もちろんそれもあるかもしれないが、今年プレミアを観戦していて明らかに昨年と違う部分を自分なりに感じ取った部分を敢えて主文とさせていただくことを御理解いただきたい。



■ 考察その1 ポゼッションの向上と、中盤の活用

 チェルシーで非常に選手のクオリティーの高いブロックはどこかと問われれば、まずMFということになるだろう。ライト・フィリップス、ロッベン、カルーをFWと捉えればFWも素晴らしいブロックだが彼らは戦術やシステム上中盤としても機能するので攻撃的MFと言う位置づけでも捉えることが可能だと思われる。
 そして、今期ベストの布陣といわれている、マケレレ、エッシェン、ランパード、バラックのロンボ型は個々の能力も非常に高く、更にマケレレの守備力の高さで前3人が攻撃に集中できると言うメリットがある。
 フィジカルと強さと攻撃の組み立てに貢献するエッシェン、キープもある程度可能で何より超高精度のミドルを装備するバラック、運動量が豊富で打点の高いヘッドは攻撃にも守備にも貢献し、何よりその視野の広さをモウリーニョが買っているバラックを同時に並び立たせるには、中盤を4枚使う必要があると言うことになる。本来はここに、J・コールと言う貴重なオプションが存在するはずなのだが今期は怪我でシーズンの殆どを棒に振ることになるだろう。
 この4枚を同時に起用することのメリットは、ズバリポゼッションの向上が上げられる。両サイドにワイドに広がるウイングが不在のこのシステムは、方々からサイドからの流れるような攻撃が激減した、との指摘が上がったが、これはモウリーニョは敢えて織り込み済みではなかったのだろうか。それよりも、中盤でポゼッションを高めることで相手を守勢に回らせることに時間を割かせ、守備ブロックの疲弊を誘っているように思える。言うなれば、遅攻を有効的に使っているのだ。もちろん、遅攻は足元の技術が確かな選手とここぞと言うときに攻めのスピードを上げられる選手を擁しないと成り立たない戦術だが、チェルシーにはそういった選手が揃っているのでその辺の心配は少ない。
 今シーズンのチェルシーはドログバの神がかり的ゴールに救われている、と言う論調が極めて強い。その点について否定はしないが、ドログバがこれだけゴールを決められるのもやはりチームが一丸となって相手チームの守備ブロックに大きなプレッシャーをかけ続け、そのプレッシャーに耐えられずに集中が切れて失点しているケースが少なくない。チェルシーが先制されながら、同点、逆転の試合が多いのはこれが理由だと思う、これは先制逃げ切りが多いマンUとは大きく異なっている。


■ 考察その2 後半4-3-3による攻撃のシフトアップで相手守備陣を翻弄する

 前半はポゼッションを優位に進めて相手の守備陣にプレッシャーをかける。遅攻を有効に活用することで相手守備陣の疲弊を誘う。
 しかし、このポゼッションを高め時折遅攻を織り交ぜ攻撃を展開するのは、後半の戦い方の布石でもある。
 後半の然るべき時間帯に4-4-2を選手の交代と同時に4-3-3へシフトする。それは、それまでポゼッション+遅攻と言う形から、サイド攻撃+速攻という戦術にシフトチェンジする合図でもある。これまでの攻めとはうって変わった、サイドにボールを集め尚且つスピード溢れる個人技での突破を図られ、それまでのディフェンスとはおよそ違うやり方を強いられ、相手DFは混乱をきたす。それに目が、体が相手の攻撃になれるのに時間を要する、もしくは対応できないまま試合が経過していくかもしれない。それは、過去2年で完成の域に達した4-3-3システムであるからこそ出来る芸当であるともいえる。最初からこのお家芸にもなりつつある4-3-3をわざと起用せずに、4-4-2でスタートする理由は上記の2点によるものと八百屋は考えている。


■ 考察その3 バラックのチームへの貢献度合い

 今シーズン新加入したバラックについての評価は、厳しいものが多い。CSのプレミア放送で「バラックが消えている」と特に実況の西岡氏が盛んに言いふらしているが、この辺についても考察したい。
 まず、モウリーニョはバラックについて、最初に何を期待し、そして今は何を期待しているのかについて考察したい。
 当初は、バイエルンでのプレーそのままのトップ下。決定的なパスの配給だけでなく、ミドルやヘッドでの得点やフィニィッシュに絡むと言う所謂トップ下の役割を期待していた。
 しかし、プレミア加入当時のバラックは、W杯の疲労を引きずっていたと言うだけでなく、プレミアのテンポにも馴染めなかったのか、速いパス回しに水を差すかのような球離れの悪さを露呈したり、周囲との連携の拙さもさらけ出してしまった。
 ここで、バラックは若干自分のプレースタイルを変える。
 それは、中盤を精力的に動き回ることで、守備陣をつり出し他の選手へのマークを希薄にすること。そして、W杯でも見せた積極的な守備である。
 特に中盤の前目の位置で精力的に動き回ることで、FW陣のマークの軽減、と言うよりはランパードへのマークの軽減に一役買った。シーズン序盤はあまり見られなかったミドルが、月を追うごとに増えたのはランパードのコンディションが上がったからと言うだけではない。彼が消えているのは、テレビが映っている枠の外で、貴重な動きをしているからである。
 そして、セットプレーや自陣が押されている場面では積極的に守備をしている。バイタルエリアで積極的に守備をしているわけではないが、やや前目に陣取りマケレレ同様2列目やサイドからの飛び出しをケアするような動きを再三にわたり見せている。もちろんセットプレーではマーカーとしての役割も果たしている。
 もちろんバラック自身、求められている本分も遂行しようと努力している。しかし、現状の自分のスキルで貢献できないと見るや否や自分のプレースタイルを修正し別の形でチームへの貢献を目指したのである。
 もちろん、彼なりの良さを全面に出したプレーも忘れてはならない。
 シーズン後半に入ってからは、ランパードとは違ったスタイルのミドルや、お得意のヘディングによる得点も増加傾向である。彼なりにプレミアにフィットしようと自分のスタイルに修正を加え、若干時間を要したかもしれないがそれが今開花しつつある。今までのチェルシーには無かったキャラクターとして、バラックは自分自身の存在価値を確立しようとしていると言っても過言ではないだろう。

 モウリーニョが、あまり良くない、馴染んでいない、とメディアからこき下ろされているバラックを使い続ける理由は上記のような理由だからではないかと思う。当初の役割とはやや違ったものになっているが、それでもチームへの貢献度合いはきわめて高いと判断し、モウリーニョは起用し続けているものと思われる。決してアブラモビッチのプレッシャーが強いから、と言うわけではない。現によりアブラモビッチが寵愛しているシェフチェンコについては、ベンチに帯同しないことも少なくないのだから。
 CSの実況の西岡氏が、チェルシーの解説をするたびに「バラックが…」「バラックが…」と苦言を呈しているが、消える理由は上記のようなことであり、決して馴染まず消えているわけではないということを八百屋は強調したい。



 長くなったので、続きは次回と言うことで。次回(機会があれば)はモウリーニョの用兵の考察と、監督交代論について少し触れたいと思う。
[PR]

by R-130 | 2007-04-06 22:39 | ∟Premierleague 06-07


<< サッカー:イングランド代表の問題点      F1:第2戦 マレーシアGP ... >>