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2007年 03月 07日
サッカー:UEFAチャンピオンズリーグ Best16 2ndleg リバプールvsバルセロナ観戦記
 非常に厳しい状況下に置かれているのは承知しながらも、心のどこかできっとバルサはやってくれると抱いていた淡い期待は、木っ端微塵に打ち砕かれてしまった。
 リバプールがBest8進出。2-2というAGGはさることながら、内容ではリバプールが圧倒していた。
 昨年のディフェンディングチャンピオンのバルサがどうしてベスト16で敗退したのかを中心に、観戦記をつづりたい。


■ リバプール   4-4-1-1

       カイト
                  ベラミー

リーセ  シッソコ  シャビ・アロンソ  ジェラード

アルベロア  ヒーピア  キャラガー  フィナン

             レイナ

【警告・退場】
アルベロア(b) シッソコ(b) ペナント(b) レイナ(b)
※シッソコは次節出場停止

【交代】
・ベラミー → ペナント (68分)
・リーセ → アウレリオ (77分)
・カイト → クラウチ (90分)

 リバプールは1stlegと同様のメンバー。


■ バルセロナ   3-4-3

 エトー   ロナウジーニョ   メッシー

           デコ

 イニエスタ  マルケス    シャビ

 プジョル    テュラム    オレゲール

          バルデス

【警告・退場】
テュラム(b)

【交代】
・エトー → ジュリ (61分)
・テュラム → グジョンセン (71分)

 SBのベレッチとジオが負傷、シウビーニョも本調子では無いということで最近採用され始めた3-4-3システムで望んだ大一番。本来、イニエスタとシャビは高い位置でプレーするイメージなのだろうが、如何せん2人とも前に進むことが少なく特にイニエスタは自陣に張り付いてしまい、役割不全に。結果このようなフォーメーションでプレー。スタメンの3トップは、コンディションが良ければバルサのベストになるのだが、エトー・メッシーと病み上がりと言うだけに…


 前半。
 想像以上に積極的な守備で、多くの観衆や視聴者を驚かせたのはリバプール。
 中盤から激しいチェイスを仕掛けて、バルサに有機的なパスを許さない。中盤の底で、中途半端な横パスをシャビ・アロンソとシッソコがカットして、すぐさまサイドハーフのジェラードとリーセに送り込むシーンが目立つ。
 本来、サイドの守備をしなければならないイニエスタとシャビは今回その役目を免除されているのか殆ど守備に絡むことが無かった。これは、攻撃的に振舞う為の代償という事だろうか。しかし、このサイドの攻め上がりで3バックの1枚がサイドに絞ることで、残り2枚が中央に絞り込む動きが発生する為、逆サイドが致命的なまでにスペースが空くという大きなリスクにさらされ、結果決定的なシーンが何度なく訪れた。
 覚えているだけでも、リーセが2回(内1回がバー)、ベラミー→カイト→リーセの波状攻撃(内2回がバルデスの正面、最後のリーセのヘッドは枠を捉えたがプジョルが体を張ってクリア)、酷かったのはV・バルデスのクリアミス。ゴールマウスを飛び出してのクリアが、ゴール正面30メートルのシッソコの足元にゴロで収まってしまい、シッソコがダイレクトで無人のゴールに蹴りこむもこれもバーに救われた。これはキックの精度の高い人間が蹴っていれば間違いなく1点ものであった。
 しかし、そんな幾度となく訪れるピンチを、本当に運だけで凌いでいくバルセロナを、"ひょっとしたら神見離していないのではないか"と思ったバルサファンは多いのではないだろうか、これは大逆転の布石なのだと…
 ところが今日のバルサは攻撃面もちぐはぐ。特にサイド攻撃を得意とするバルサが、SBの攻め上がりを無くして、メッシーが孤立するシーンは哀れだった。メッシーには、アルベロア・シソコ・シャビ・アロンソが2重にも3重にも周りを囲み、メッシーをサイドに追いやる。果敢な仕掛けも3人相手には無謀。いつもなら、ザンブロッタやベレッチの攻め上がりによるコンビネーションがなくなったことでますます孤立を深め、結果自陣に戻すパスが大半を占めた。ここで、デコやシャビにこの役割が期待されたわけだが、残念、彼らはサイドハーフの選手ではない。このバルサの3-4-3の致命的な欠点、ウイングの孤立、は今日の敗因の決定的な要因になってしまう。
 エトーが復調していなかったことも今回はマイナス材料だった。ロナウジーニョが中央に張り、マーカーを引き付ける事で左サイドに回ったエトーのプレーを引き出そうと言う目論見は、残念ながらエトーが復調しておらず、フィナン1人で事足りたことで全てが水泡に帰してしまった。これも、事前に懸念された事案であった。やはりここは、グジョンセン(この場合はセンターにグジョンセンで左にロナウジーニョ)かジュリ(この場合は中央にロナウジーニョ、左にメッシー、右にジュリ)をスタメンに立てるべきだった。
 結果、前半僅か1本のシュートにとどまるバルセロナに対して、終われる立場のはずのリバプールがシュート10本を放ち、戦前の予想をまたしても裏切る形で前半は終了した。

 後半。
 両チームともメンバーの交代はなし。ライカールトは前半の字チームの戦いぶりをどう分析したのだろうか。これでいいと思ったのだろうか。
 動き出したのはバルセロナ。不調のエトーに代えてジュリ。メッシーを左に持ち出してジュリを右に置く。この采配には異論が無い。
 ベニテスも動く、先週末にマンUと対戦したときと同じく、ベラミー→ペナント。守備固めか、ベラミーの足がとまりかけていたからの交代か、しかしバルサDF陣にとってはベラミーはリーガ・エスパニョーラにはいないタイプのやりにくいFWだったはず。これはバルサにとって助かった。
 これを見て、ライカールトも大鉈を振るう。テュラム→グジョンセン。勝負に出た。マルケスを最終ラインに下げて前を厚くする。もう2点取るしかないバルサには仕方の無い前がかかりぶりだ。この後、ロナウジーニョが決定的なチャンスをつかむもこれはリバプールの右ポストに嫌われる。八百屋はこの瞬間、バルサの敗退を覚悟した。勝つチームと言う物は、役者が決めるときに決めるものなのだ。しかし、役者が決められなかったバルサには、ベスト8という道標がかすんで見えていたことだろう。
 グジョンセン効果が徐々に出始めた76分、ようやくバルセロナは先制する。オフサイドギリギリで抜け出したグジョンセンが、落ち着いてフェイントでレイナを交わして無人のゴールへ…遅すぎるバルサの先制ゴールだった。
 その後約5分間、バルサのイケイケモード全開となるがこの5分を活かしきれることなく、リバプールもベニテスが交代を巧みに使ってゲームを落ち着かせ、逆にカウンターから、ジェラードのゴール前の鋭い切り返しから至近距離でのシュートを浴びるなど、最後まで強いバルサは戻らないまま、90分が終了。
 バルセロナは、負けるべくして負けてしまった試合だった。

 この試合の敗因は、1サイドバックの攻撃を無くした3-4-3システム 2不調のエトーをスタメン起用した まではあげたが、もう一つある。
 それは、このブログでも何度となく指摘しているライカールトの用兵である。
 まずは前半の戦い方を見て、何故すぐに手を打たなかったのか。これが解せない。
 早い話、エトー→ジュリ、テュラム→グジョンセン、あるいは2枚換えをいち早く決断すべきではなかったのか。もし1失点しても2得点すれば少なくとも追いつく訳である。ここは失点を恐れず2得点を目指す采配を処するべきであった。事実、グジョンセンが入って暫くはその効果が現れた。中央にも裏をとろうとするグジョンセンの動きが加わったことでラインを気にするようになったリバプールDFライン。結果、ロナウジーニョやデコへのプレッシャーが1時的に弱まったのが、良質のパスを引き出せる結果となった。
 また、前半メッシーを見殺しにしていたサイドへの対策も打つべきであった。
 望むらくは、後半最初に4-3-3に戻す英断をして欲しかった。コマ不足なのは解るが、オレゲールをRSB、ザンブロッタをLSBでも良かったはずだ。中盤で消えていたイニエスタか、シャビを1枚削ってでも、サイド攻撃を活性化させる必要はあったのではないだろうか。
 そうでなくとも、最後の1枚。これはオレゲール→ザンブロッタを実践して欲しかった。もうバランス云々を言うときではなかったはずだ。ザンブロッタの攻撃参加を見たかった。後半に、ジュリをオレゲールが追い越してチャンスメイクしたシーンが一度だけある。これに、ライカールトは閃いてほしかった。

 残念ながら1勝1敗、AGGも2-2ながら内容はリバプールの圧勝、バルセロナの完敗だった。負け惜しみではないが、リバプールがCLを制するとは思えない。しかし、バルセロナがCLを制するだけの実力が今年は備わっていなかったのがこの2戦で露呈されてしまった。
 応援している人間としては本当に残念で悔しいが、それ以上にクリーンでしかも激しいプレーでバルサを打ち負かしたリバプールとベニテスに賞賛の拍手を送りたい。

 かのクライフが、「バルサの一つの時代が終わろうとしている」、とこの冬スペインの雑誌に寄稿したという記事をどこかで読んだ。
 図らずも、本当にバルサの1時代が終わろうとしているような錯覚に陥ってしまった。
 クライフの言葉に屈せず、最後の砦となったリーガ・エスパニョーラのタイトルだけはぜひとも死守してもらいたい。

by R-130 | 2007-03-07 21:40 | ∟UEFA CL 06-07


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