2007年 04月 06日
ユーロ08予選。06年W杯では優勝候補にも推された(八百屋も推していた)スリーライオンズが、早くも敗退の危機を迎えている。 これは同時に、W杯後、エリクソンの後を引き継いだマクラーレン政権が更迭の危機を迎えているのと同じ意味合いも持つ。 3/24にアウェーでのイスラエル戦を観戦し、現状のイングランド代表の問題点を考察したい。 ■ 効果的なパスを配給できる中盤の不在 今回、見ていた中での最大の問題点は、中盤でゲームを構築できる人物が不在だったと言うこと、これに尽きる。 個人個人で見れば、なかなかいい動きを見せている選手もいたが(レノンなど)、攻撃の形と言う部分で見ると、組織的な動きはゼロに近かかった。 バックラインから、中盤にボールを回しても、その先に回し所が無く、まだバックラインにボールが戻る。 その繰り返しを何度かした挙句、最後には最終ラインからのロングフィード…昔のイングランドの"キック&ラッシュ"のスタイルが戻ってしまったかのようだ。 しかし、キック&ラッシュにうってつけの選手がピッチにいると言うわけでもなく、このフィードは闇雲にボールを前に蹴りだすだけの苦し紛れのプレーに過ぎない。 確かに、両サイドバックの故障で、フィリップ・ネビルとジェイミー・キャラガーと言う守備的な雰囲気が漂うサイドバックが代役だった為、攻め上がりに乏しく中盤からのボールの配給先に苦労したと言う一面はある。 それにしても、ハーグリーブスはボール捌きがうまいと言うわけでもなく、ランパードもポジショニングと攻めあがりに長けたMF。ジェラードは右サイドに張り付かざるを得なかった為、その役目を果たす選手がピッチ上にいなかったのである。 と、言うか今のイングランド代表にその役目が果たせる選手がいないに等しいと言うことなのだ。 ロングボールを多用した結果、ルーニーが全く活きないと言う悪条件に陥った。プレミアでのマンUの試合運びを見ていれば明らかだが、彼は中盤に下がってボールを受け、チャンスメイクをしながらこれまたポジショニング巧みに前線に顔を出していくタイプである。ボールに触れないと彼の特徴は活きないのだ。 これは、アンドリュー・ジョンソンの出来がどうとかいう問題以前の問題で、戦術が無いに等しい中で、各選手が悪戦苦闘しながら打開策を模索すると言う、信じられないような試合展開が続いていたのである。 さて、それでは中盤のこの司令塔の適役は誰か? イングランド国籍なら誰でもOK、と言う条件ならポール・スコールズということになるだろう。 昔は1.5列目からのフィニィッシャー的な役割が強かった彼も、今シーズンは中盤の底から巧みにボールを散らすと言う、プレーの新境地を切り開いている。マンUの攻撃は彼を経由して行われていると言っても過言ではなく、彼がボールを散らしながら中盤でバランスを取っているということからも、ギグス、ロナウド、ルーニー、サハと言った選手が守備を気にすることなく攻撃に専念できると言うメリットを生み出しているのだ。 しかし、彼はマクラーレンからの代表復帰の打診を断っている。彼が代表に復帰する可能性は極めて低いと言わざるを得ないだろう。 それに、イングランドのMFは、所謂"ランパードタイプ"や"ガットゥーゾタイプ"が多く、スコールズみたいな"ピルロタイプ"は希少価値である。 と、言うのもプレミアでのその役回りは、所謂4強はスコールズを除いてイングランド国籍では無い選手が担っているのである。チェルシーからミケル・エッシェン・マケレレ、アーセナルはファブレガス、リバプールはシャビ・アロンソ、いずれもイングランド国籍ではない。 マンUにいるキャリックが比較的それに近い役割を担っているが、スコールズが新境地を開拓してしまった為、彼が育たなくなったという弊害が生まれている。予想以上にスコールズが仕事をしてしまっているのである。 これに近い役回りで、ニューカッスルのジェナスが辛うじて近いところにいるが、将来を渇望されながら、彼も完全に伸び悩んでいる。本当に適材がいないのだ。 若い世代では、レオ・コーカーやカッターモール、ハドルストーンが取り沙汰されているが、彼らはいずれも"ピルロタイプ"では無い。どちらかといえば、ランパードやガットゥーゾタイプに属し、広い視野を活かしたパスが得意分野ではない。ともすれば、キャリックやジェナスが育たないとイングランドサッカーに活路は見出せないだろう。 マクラーレン監督が辞任して、他の監督が就任したとしても(後任はボルトンのアラダイスが有力)、戦術の大きな路線転向をしないと好転しないだろう。両サイドハーフにそこそこ人材が育っているので、バレンシアのようなカウンタースタイルにするとか、ローマのようなゼロトップサッカーを目指すとか…現状の人材を考えると、プレミアで上位陣がやっているスタイルのサッカーを追随するのは不可能に近い。マクラーレン・もしくは後任監督がその辺を踏まえた改革に着手しないと今後も厳しい予選になりそうだ。最悪本当に予選落ちがありうる状況だ。 ■ 悩める2トップ ルーニーの相方問題 今回、アンドリュー・ジョンソンとデフォーの2名がルーニーとコンビを組んだ。どちらも悪いということ無いのだが、どちらに可能性があるかと聞かれれば、後半、イングランド最大の得点チャンスを生み出したデフォーのほうに可能性を感じるというのが大方の意見では無いだろうか。 やはり、ルーニーの相方はデフォーと怪我のダレン・ベント、そして鼻を骨折しているクラウチが一番近いところにいるようだ。この中でも現状だとクラウチということにもなるだろう。リーグ戦やCLでもいい動きを見せている。これを代表レベルでもコンスタントに維持できれば、彼が代表に定着するのも時間の問題と言うことになる。(←八百屋はクラウチに懐疑的なので、100%自信を持って推せないが現状は消去法で彼になるだろう) また、これは完全に構想外かもしれないが、今年のレディングの大躍進の一翼を担う、リロイ・リタも是非召集してほしい選手である。彼の代表でのプレーを見てみたいと思うのは八百屋だけではないはず。 鳴り物入りでU-21から飛び級召集を受けたニュージェントも是非試してほしい逸材である。彼もなかなかの逸材だと聞く。2部リーグ所属ということに臆することなく、もし出場機会を得られたら是非頑張ってもらいたい。 次回は最大のライバルになりそうなロシアとの試合が控えている。この試合でもし負けるようなことになれば、予選突破はほぼ絶望的となり、マクラーレン監督の更迭は避けられないだろう。 一部報道でルーニーと大喧嘩などが報じられているが、基本的にそれ以前の問題である。 イングランド代表の長いトンネルは何時抜けるのだろうか。とりあえず戦術やシステムに、一つの筋を通すことが大前提になるだろう。
by R-130
| 2007-04-06 22:44
| ∟UEFA Euro 2008
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